平成26年度古川黎明高等学校卒業式 式辞

 春弥生,いまだ冷たい風が吹き付ける中,白梅は,日一日と力強くなる日光を全身に浴び,たくさんのつぼみが開花の準備を始めています。
 この佳き日,同窓会長,PTA会長を始め多数の御来賓の皆様の御臨席を賜り,平成26年度宮城県古川黎明高等学校第10回卒業証書授与式を挙行できますことは,卒業生はもとより教職員,在校生一同にとって,この上ない喜びであります。本日御臨席の皆様に,心より感謝申し上げます。
 さて,ただ今,卒業証書を授与した235名の皆さん,卒業おめでとう。
 今,皆さんの頭の中では,3年間のたくさんの思い出の映像が,高速で再生されていることと思います。振り返れば高校生活での,様々な試練もあったことと思いますが,その厳しい環境の中においても,学業を全うすることができました。これからの飛躍と飛翔を期待しています。
 保護者の皆様,お子様の御卒業,誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。本校でお預かりしましたこの3年間で,心身とも一回りも二回りも大きく成長し,自立への道を歩み始めるまでになりました。御家庭においても,数多くの御苦労があったものと推察いたします。十代後半の青春期特有の悩みを抱え,苦悩している姿も何度か見てきたことと思います。
 しかし,生徒たちは日々の生活の中で自ら乗り越え,解決してきました。高校生活の中で,学業だけではなく力強い精神力をも身につけてくれました。お子様方の益々の御活躍を心から期待しております。
 本校は大正9年の開校以来,94年,卒業生も29,415名を数えるまでになり,古川黎明高等学校としても,2,391名となりました。
 本校は「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと,「自ら課題を発見し解決する生徒の育成」「自立し未来に立ち向かっていく生徒の育成」「互いをよく理解し共に生きる生徒の育成」という3つの教育目標に基づき教育活動に取り組んでいます。
 平成24年度,文部科学省より「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の指定を受け,一昨年夏には素晴らしい施設設備に恵まれた新校舎も完成し,教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは,SSHの第1期生として,1学年で「SS総合Ⅰ・防災地域科学課題研究」,2学年では「SS総合Ⅱ・課題研究」などの特長ある活動に,熱心に取り組んできました。困難が予想される内容もありましたが,皆さんは,素晴らしい研究成果を後輩に示してくれました。
 また,中高一貫教育校の生徒として,中学生,高校生,一貫生,通常生の違いを乗り越えて,全校生徒の交流が活発になるように,体育祭や黎明祭などの学校行事や生徒会活動において,中心となり活動してくれました。
 部活動では,部員同士の連帯を図るとともに,日々の活動での集中力と忍耐力,自分自身の気持ちをコントロールする力を身につけ,最後の最後まで努力する姿を,後輩たちの脳裏にしっかりと焼き付けてくれました。このことは皆さんにとっても,これからの長い人生での道しるべとなるものと思います。
 次に,今日の門出に際して,卒業する皆さんに2つお話ししたいと思います。
 まず,はっきりと「ありがとう」という言葉を伝えてほしいということです。
 日本語には「どうも」という大変便利な言葉があり,「ありがとう」「すみません」「こんにちはお元気ですか」などの意味で日常生活で多用されています。
 家族や親友のように「あうんの呼吸」で意思疎通を図ることができる場合もありますが,自分の気持ちは,しっかりと理解してもらうように表現していくことが大切だと思います。わかってくれているから「どうも」だけでいいではなく,はっきりと「ありがとう」と言葉にして,気持ちを伝えていくことが,特に現代社会での大切な潤滑油となっていくものだと思います。
 次に,臨床心理学者の河合隼雄さんの著書「こころの処方箋」から,「心のなかの勝負は51対49のことが多い」というものです。
 河合さんは次のように述べています。
『51対49というと僅かの差である。しかし,多くの場合,底の方の対立は無意識のなかに沈んでしまい,意識されるところでは,2対0の勝負のように感じられている。サッカーの勝負だと,2対0なら完勝である。従って,意識的には片方が非常に強く主張されるのだが,その実はそれほど一方的ではないのである。』
 物事を決断するとき,私たちの心の奥底には相反する意見が常に存在しているのにも関わらず,どちらかに決めてしまうと,相反するどちらの意見にも良い面,良くない面があったとしても,決めた方の意見のみを強く主張してしまうということです。実際には51対49のようにきわどい差であるのに,あたかも2対0の完勝であると決めつけてしまうのです。
 議論に際して,自分の意見を主張するだけではなく,自分の意見や考えを冷静に分析し,互いに相手の考えとの共通性や対立点を分析して議論することが重要であるということにつながると思います。
 最後になりますが,卒業生の皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族に加え,地域の皆様の御支援と御協力に対する感謝の気持ちも,決して忘れないでほしいと思います。
 さらに,校歌の一節にある『一念の「誠」のしるべ 朝夕のたゆまぬ「励」』,この意味するところを肝に銘じ,未来に向けて,ふるさとの一員として社会に貢献し,ふるさとの発展を創造していくことを願ってやみません。
 結びに,本日は御多用のところ,御臨席を賜りました御来賓の皆様,保護者の皆様に厚くお礼を申し上げ,式辞といたします。

 平成27年3月1日
宮城県古川黎明高等学校 校長 庄子 英利