平成25年度古川黎明中学校卒業式 式辞

 暦の上の春とは名ばかりで、連日の吹雪のなか、校木の白梅は、苦寒風雪を乗り越え、日一日とつぼみを大きく成長させ、その開花が待ち望まれるところです。
 この佳き日、同窓会長、中学校PTA会長、中高PTA会長をはじめ多数のご来賓、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成二十五年度宮城県古川黎明中学校 第七回 卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより教職員、在校生一同にとりましても、この上ない喜びであり、ご臨席の皆様に、心より御礼申し上げます。
 さて、ただ今、卒業証書を授与いたしました、八十名の卒業生の皆さん、これで無事に義務教育九年間の業を卒えました。ご卒業おめでとうございます。
 三年前の一月、県立中学校適性検査という難関を実力で突破して、本校第七期生として本校に入学することとなった矢先の三月、突然、東日本大震災という未曾有の災害に見舞われました。その大混乱のさなか、入学式も二週間遅れ、これから始まる中学校生活に、大きな不安を感じたことと思います。しかし、皆さんは自らも被災者でありながら、勇気を奮い立たせ、中学生としてできる様々な被災地支援活動にも進んで取り組んでくれました。この三年間、震災を忘れず、様々な試練から多くを学び、厳しい環境にも負けず頑張る姿をいつも見ることができました。本当にこの三年間、よく頑張ってくれました。
 まず、これから卒業生の皆さんのこの一年の活躍を振り返ってみたいと思います。
 スポーツ部門です。大崎市中体連総合体育大会で、バドミントン女子団体で第二位、個人でもダブルスで二チームが第三位、女子バレーボールも第三位に入賞しました。
 大崎市中体連陸上競技大会では、男子走幅跳びで大会新記録第一位、女子は、砲丸投げで第一位、走高跳びで第一位と第二位に入賞するなど、大活躍しました。他の種目でも上位入賞し、女子総合で優勝しました。
 大崎市中学校駅伝競争大会では、女子総合で第三位に入賞しました。
 さらに、女子円盤投げでジュニアオリンピック陸上競技大会全国大会に出場しました。
 次に、文化部門です。全国中学生人権作文コンテストで全国九十万をこえる応募作品から、全国第一位となる内閣総理大臣賞を受賞しました。さらに、全国小中学生作文コンクールで県優秀賞、宮城県中学校弁論大会で優良賞、少年の主張宮城県大会で優良賞を受賞しました。
 吹奏楽部は全日本中学高校生管打楽器ソロコンテスト南東北大会で金賞、合唱部は宮城県合唱アンサンブルコンテスト中学校の部で金賞・理事長賞に輝きました。
 自然科学部は、「みやぎサイエンス・フェスタ」や「日本学生科学賞宮城県審査会」で表彰されました。
 また、三年生有志が「チーム・アウローラ」を結成して参加した、第一回全国中学校リズムダンスふれあいコンクールの課題曲部門では、最優秀賞となる文部科学大臣賞受賞の快挙を成し遂げました。
 この他にも、多数の大会、コンテスト、コンクールの地区大会、県大会で入賞し、「古川黎明中学校」の底力を十二分に発揮してくれました。
 学校行事では、黎明祭でのクラスパフォーマンス、体育祭での縦割り競技、そして合唱祭。どの行事でも三年生が下級生を常にリードしている姿がとても印象的でした。
 本校は中高一貫教育校として、平成十七年に開校し「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと、教育活動に取り組んでいます。昨年度からは、文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」の指定を受け、中学校と高校の連携も深め、教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは、中学生と高校生との交流の活発化を図るために、黎明祭、体育祭などの中高合同の学校行事やあいさつ運動などの生徒会活動にも熱心に取り組んでくれました。昨年八月には念願の新校舎が完成し、教室棟の南校舎では、一階の中学生から、四階の高校一年生まで、中高生が同じ校舎で生活するようになり、一層その気持ちを強くしたものと思います。
 学校の伝統とは、脈々と受け継がれていくものではありますが、古川黎明中学校の卒業生は、皆さん第七期生を含めて、まだ五百五十七名であります。受け継ぐべき伝統も重要ですが、新たに伝統を生み出していくことも大切だと思います。後輩たちは、間違いなく多くの伝統を引き継ぎ、新しい学校づくりも継承してくれると思います。古川黎明高校や他の上級学校へ進学後も、この古川黎明中学校での生活をいつまでも忘れないでいてほしいと思います。
 もう一つ、皆さんを暖かく見守ってこられた保護者やご家族、地域の方々のご支援に対する感謝の気持ちも大切にし、決して忘れないでほしいと思います。

 次に、今日の門出に際して、卒業する皆さんにはなむけの言葉を贈りたいと思います。
 それは、臨床心理学者で、文化庁長官を務められた河合隼雄さんの著書「こころの処方箋」から、「百点以外はダメなときがある」というものです。
 「人生にも、ここぞというときがある。それはそれほど回数が多いものではない。とすると、そのときに準備も十分にせず、覚悟も決めずに挑むのは、全くばかげている。ところが、案外、そのような時でも九十点も取ればよかろう、という態度で臨む人が多いように思われる。このような人が、自分はいつも努力しているのに、運が悪いと嘆くのは、ことの道理がわかっていないと言うべきであろう。」と述べています。
 ここでいう百点とは、いわゆる試験の点数だけとは限らないと思います。どこまで頑張るのか、努力できるのかということも含む、それぞれの人の生き方と関わるものだと思います。通常の生活では、人それぞれの平均点であれば特に問題はないのだろうと思います。しかし、本当の試練は必ずいつかやってきます。前もってわかっている場合もあれば、突然やってくる場合もあると思います。そのとき、試されるのではないでしょうか。そのとき、果たして皆さんは全力を出せますか。大丈夫ですか。
 しかし、本校で三年間真剣に学習や様々な活動に正面から取り組んできた皆さんであれば、しっかりと力を蓄えてきていると信じています。そして、この時とあれば、十二分に力を発揮してくれるものと思います。
 社会の風潮に流されず、自分の意志を持ち、常に教養を高める習慣が身についていれば、いつでも百点である必要はありません。それよりも、必要な時にメリハリをつけて全力投球できる人、そして、感性豊かな人になってほしいと思います。

 保護者の皆様に申し上げます。
 お子様のご卒業、誠におめでとうございます。今日のこの姿を、三年前の姿と重ね合わせている保護者の皆さんもいらっしゃると思います。お子様方は、本当に成長しました。心身ともに大きくなりました。
 中高一貫教育校である本校で、日常生活において高校生と身近に接し、学校行事や部活動で交流し、さらに、一貫校としての独自の教育活動やSSH事業を経験することにより、お子様方は、本校教育目標にある、創造性を育み、自主・自立の精神と共生の心をしっかりと身につけてきました。今後、高校生としてもう一段の飛躍をしていくものと考えております。この三年間、保護者の皆様から本校の教育活動に対する深いご理解とともに、暖かいご支援、ご協力を賜りました。ここに、深く感謝申し上げます。
 最後になりますが、卒業生の皆さん、古川黎明中学校で学び、体験し、本校で過ごした三年間の有意義な時を忘れず、これからの高校生活をより充実させることを期待しています。皆さんが、これからも故郷の復興と未来のふるさとの発展のため、行動し続けることを心から願ってやみません。
 結びに、本日はご多用のところ、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様、保護者の皆様に厚く御礼を申し上げ、式辞といたします。

 平成二十六年三月九日
宮城県古川黎明中学校        
校長 庄子 英利