校長室から皆様へ

平成26年度古川黎明中学校卒業式 式辞

 苦寒風雪を乗り越えてきた白梅が,花開く季節も間近となりました。
 この佳き日,同窓会長,中学校PTA会長,中高PTA会長をはじめ,多数の御来賓並びに保護者の皆様の御臨席を賜り,平成26年度宮城県古川黎明中学校 第8回 卒業証書授与式を挙行できますことは,卒業生はもとより教職員,在校生一同にとりましても,この上ない喜びであり,御臨席の皆様に,心よりお礼申し上げます。
 さて,ただ今,卒業証書を授与した79名の皆さん,御卒業おめでとうございます。
 私たちの故郷は,4年前の3月,東日本大震災という未曾有の大災害に見舞われました。皆さんは,大震災での大混乱の中,不安だけが先立つ生活を体験しました。その経験は皆さん一人一人の心のなかにしっかりと刻みつけられ,日々の学習活動に生かされてきたと感じています。この経験を忘れず,その試練をバネにして,厳しい環境にも負けずに頑張ってほしいと思います。
 それでは,卒業生の皆さんの今年度の活躍を振り返ってみたいと思います。
 学校行事では,体育祭での縦割り競技,黎明祭でのクラスパフォーマンスや展示,発表,販売,そして合唱祭。どの行事でも常に下級生をリードし,サポートしながら,黎明生としての自覚を促し,伝統の発展継続に力を注いできました。厳しく,優しく,丁寧に指導する姿がとても輝いていました。
 スポーツ部門では,宮城県中学校総合体育大会で,剣道,弓道,新体操,卓球及び陸上競技に出場しました。新体操部は女子団体第5位入賞,陸上競技では男子四種競技で第1位,女子100mで大会新記録第1位,女子100mHで第5位,女子砲丸投げで第7位に入賞しました。
 弓道部は東北弓道ジュニア選手権大会に出場し,男女個人でともに第5位に入賞しました。
 全国中学校陸上競技選手権大会では,女子100mで第4位,ジュニアオリンピック陸上競技大会全国大会においても,女子ジュニアA100mで第3位と大活躍しました。
 文化部門では,合唱部が全日本合唱コンクール県大会で金賞・審査員特別賞を受賞,自然科学部は,『学都「仙台・宮城」サイエンスデイ2014』において参加団体では最多となる11件の賞を獲得しました。
 コンテストやコンクールでは,宮城県読書感想画コンクール第1位,宮城県読書感想文コンクール優秀賞,国土緑化運動・育樹運動ポスター原画コンクール優秀賞,全国人権作文コンテスト県大会優秀賞,少年の主張宮城県大会優良賞,新聞記事コンクール論説委員長賞など数多くの賞をいただきました。
 また,「COPA COCA-COLA 2014」これは中学生によるサッカー全国大会ですが,合同チームで出場し優勝を果たしました。
 この他にも多数の大会で入賞し,古川黎明中学校ここにあり,とその存在感を示してくれました。
 本校は中高一貫教育校として,平成17年に開校して以来,様々な独自の教育活動に取り組んでいます。平成24年度からは,文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の指定を受け,中学校と高校の連携も深め,教育活動の一層の充実に努めてきました。このような中で卒業生の皆さんは,学業はもちろんのこと,中学生と高校生との交流の活発化を図るために,中高合同の学校行事やあいさつ運動などの生徒会活動への熱心な取組が見られました。
 開校以来,10年が経過し中学校としての伝統も根付き始めましたが,本校はまだまだ若い学校です。古川黎明中学校の卒業生は,皆さん第八期生を含めて,636名です。後輩たちは,これまでの伝統を引き継ぎ,新しい学校づくりも継承してくれると思います。今後はこれまでの経験を生かし,高校生の立場で,後輩たちを積極的に支援してほしいと思います。
 そして,皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族,地域の方々に対する感謝の気持ちも大切にし,これからも決して忘れないでほしいと思います。
 次に,今日の門出に際して,卒業する皆さんにはなむけの言葉を贈りたいと思います。
 それは,「よく考えること」です。
 全ては時が解決してくれるということもよく言われますが,時間が経過しても無為に過ごしては何も解決しません。これまでも,なぜだろう,どうすればいいのだろうという疑問や課題がいくつもあったことと思います。しかし,悩むだけでは何も解決しません。
 しっかり考えることです。ひたすら考えることです。物事には必ず始まりがあり,そして,動きがあります。はじめの状態から,どのように変化していくのか,今変化するのか,後から変化するのか,どうすれば,それを見極められるのかをよく考えるのです。どのように考えればいいのか。それは,私たち自身が持つ感覚です。その感覚を総動員することです。しかし,そのためには訓練が必要です。考えることを訓練することで,自己表現する力と課題を解決する力が高まります。物事を複数の方向から多面的に考えることができるようになります。
 現代社会は,知識基盤社会といわれています。様々な場面で多くの知識が要求されることになります,知識や技術を身につけるだけではなく,さらに,思考力,判断力,表現力を高めることが求められています。つまり,しっかり考えることがより重要になるのです。
 本校には,「言偏」という独自の科目があります。皆さんは,この授業を3年間真剣に正面から取り組んできました。やればできるという自信を身につけたはずです。何事もやればできると思います。考えればなんとかなります。今後,大切なその時に,十二分に力を発揮することができるはずです。
 また,本校はSSH指定校です。高校ではその活動が一層深まり,課題研究も始まります。これまで取り組んできた,しっかりと考えることに磨きをかけてほしいと思います。
 保護者の皆様に申し上げます。
 お子様の御卒業,誠におめでとうございます。卒業証書を受け取る姿を御覧になりながら,3年前の姿を思い出された保護者の皆さんも多いと思います。本校に入学してからの3年間で,お子様は知力,体力に加えて,心もたくましく成長しました。中高一貫教育校である本校で,日常生活において高校生と身近に接し,学校行事や生徒会活動などで交流し,高校教員による授業などの教育活動や,SSH事業などに全力で取り組んできました。これから始まる高校生活においては,この経験を生かし,もう一段高いレベルでの活躍を期待しているところです。
 この3年間,保護者の皆様から本校の教育活動に対する深い御理解のもと,暖かい御支援,御協力を賜りましたことに,深く感謝申し上げます。
 最後になりますが,卒業生の皆さんは,本校での沢山の体験から,多くを学び,多くの悩みも解決しながら本校で3年間過ごしてきました。これから始まる高校生活にも新たな気持ちで挑戦し,充実した生活となるよう努力してください。
 21世紀を果敢に生き抜くために,興味関心を幅広く持ち,未来を展望し,将来の目標を定め,行動して行くことを心から願っています。
 結びに,本日は御多用のところ,御臨席を賜りました御来賓の皆様,保護者の皆様に厚くお礼を申し上げ,式辞といたします。

 平成27年3月8日
宮城県古川黎明中学校 校長 庄子 英利 

平成26年度古川黎明高等学校卒業式 式辞

 春弥生,いまだ冷たい風が吹き付ける中,白梅は,日一日と力強くなる日光を全身に浴び,たくさんのつぼみが開花の準備を始めています。
 この佳き日,同窓会長,PTA会長を始め多数の御来賓の皆様の御臨席を賜り,平成26年度宮城県古川黎明高等学校第10回卒業証書授与式を挙行できますことは,卒業生はもとより教職員,在校生一同にとって,この上ない喜びであります。本日御臨席の皆様に,心より感謝申し上げます。
 さて,ただ今,卒業証書を授与した235名の皆さん,卒業おめでとう。
 今,皆さんの頭の中では,3年間のたくさんの思い出の映像が,高速で再生されていることと思います。振り返れば高校生活での,様々な試練もあったことと思いますが,その厳しい環境の中においても,学業を全うすることができました。これからの飛躍と飛翔を期待しています。
 保護者の皆様,お子様の御卒業,誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。本校でお預かりしましたこの3年間で,心身とも一回りも二回りも大きく成長し,自立への道を歩み始めるまでになりました。御家庭においても,数多くの御苦労があったものと推察いたします。十代後半の青春期特有の悩みを抱え,苦悩している姿も何度か見てきたことと思います。
 しかし,生徒たちは日々の生活の中で自ら乗り越え,解決してきました。高校生活の中で,学業だけではなく力強い精神力をも身につけてくれました。お子様方の益々の御活躍を心から期待しております。
 本校は大正9年の開校以来,94年,卒業生も29,415名を数えるまでになり,古川黎明高等学校としても,2,391名となりました。
 本校は「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと,「自ら課題を発見し解決する生徒の育成」「自立し未来に立ち向かっていく生徒の育成」「互いをよく理解し共に生きる生徒の育成」という3つの教育目標に基づき教育活動に取り組んでいます。
 平成24年度,文部科学省より「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の指定を受け,一昨年夏には素晴らしい施設設備に恵まれた新校舎も完成し,教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは,SSHの第1期生として,1学年で「SS総合Ⅰ・防災地域科学課題研究」,2学年では「SS総合Ⅱ・課題研究」などの特長ある活動に,熱心に取り組んできました。困難が予想される内容もありましたが,皆さんは,素晴らしい研究成果を後輩に示してくれました。
 また,中高一貫教育校の生徒として,中学生,高校生,一貫生,通常生の違いを乗り越えて,全校生徒の交流が活発になるように,体育祭や黎明祭などの学校行事や生徒会活動において,中心となり活動してくれました。
 部活動では,部員同士の連帯を図るとともに,日々の活動での集中力と忍耐力,自分自身の気持ちをコントロールする力を身につけ,最後の最後まで努力する姿を,後輩たちの脳裏にしっかりと焼き付けてくれました。このことは皆さんにとっても,これからの長い人生での道しるべとなるものと思います。
 次に,今日の門出に際して,卒業する皆さんに2つお話ししたいと思います。
 まず,はっきりと「ありがとう」という言葉を伝えてほしいということです。
 日本語には「どうも」という大変便利な言葉があり,「ありがとう」「すみません」「こんにちはお元気ですか」などの意味で日常生活で多用されています。
 家族や親友のように「あうんの呼吸」で意思疎通を図ることができる場合もありますが,自分の気持ちは,しっかりと理解してもらうように表現していくことが大切だと思います。わかってくれているから「どうも」だけでいいではなく,はっきりと「ありがとう」と言葉にして,気持ちを伝えていくことが,特に現代社会での大切な潤滑油となっていくものだと思います。
 次に,臨床心理学者の河合隼雄さんの著書「こころの処方箋」から,「心のなかの勝負は51対49のことが多い」というものです。
 河合さんは次のように述べています。
『51対49というと僅かの差である。しかし,多くの場合,底の方の対立は無意識のなかに沈んでしまい,意識されるところでは,2対0の勝負のように感じられている。サッカーの勝負だと,2対0なら完勝である。従って,意識的には片方が非常に強く主張されるのだが,その実はそれほど一方的ではないのである。』
 物事を決断するとき,私たちの心の奥底には相反する意見が常に存在しているのにも関わらず,どちらかに決めてしまうと,相反するどちらの意見にも良い面,良くない面があったとしても,決めた方の意見のみを強く主張してしまうということです。実際には51対49のようにきわどい差であるのに,あたかも2対0の完勝であると決めつけてしまうのです。
 議論に際して,自分の意見を主張するだけではなく,自分の意見や考えを冷静に分析し,互いに相手の考えとの共通性や対立点を分析して議論することが重要であるということにつながると思います。
 最後になりますが,卒業生の皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族に加え,地域の皆様の御支援と御協力に対する感謝の気持ちも,決して忘れないでほしいと思います。
 さらに,校歌の一節にある『一念の「誠」のしるべ 朝夕のたゆまぬ「励」』,この意味するところを肝に銘じ,未来に向けて,ふるさとの一員として社会に貢献し,ふるさとの発展を創造していくことを願ってやみません。
 結びに,本日は御多用のところ,御臨席を賜りました御来賓の皆様,保護者の皆様に厚くお礼を申し上げ,式辞といたします。

 平成27年3月1日
宮城県古川黎明高等学校 校長 庄子 英利 

平成26年度古川黎明中学校・高等学校入学式 式辞

 新校舎玄関前に移植した校木の白梅が,いつものように,清楚に満開の季節を迎えました。
 この佳き日,PTA会長,同窓会長をはじめ多数のご来賓のご臨席のもと,平成26年度,宮城県古川黎明中学校・高等学校の入学式を挙行できますことは,誠に喜ばしい限りであります。ご臨席の皆様に対しまして,厚く御礼申し上げますとともに,本日,晴れの日を迎えられました保護者の皆様に,心よりお喜びを申し上げます。
 ただいま入学を許可した中学校105名,高等学校全日制課程普通科240名の新入生の皆さん,入学おめでとう。教職員及び在校生一同,皆さんの入学を心より歓迎します。
 本校は,大正9年に志田郡立古川高等女学校として開校,宮城県古川高等女学校をへて,戦後の学制改革により,宮城県古川女子高等学校となりましたが,その間80年以上にわたり,大崎地区の女子教育の中心校として,優れた人材を輩出してきました。
 そして,平成17年4月,宮城県の公立学校として最初の,併設型中高一貫教育校「宮城県古川黎明中学校・高等学校」としての歩みを始め,さらに昨年,念願の新校舎も完成し,古川黎明のセカンドステージが動き出しました。
 今年は,古川高等女学校の開校以来,94周年を迎えました。既に2万9千人を越える卒業生を,国内外に送り出し,古川黎明中学校の卒業生も550名を越えました。これまでの長い期間に積み重ねられた数々の歴史と伝統は,揺るぎなく,100周年に向けて,さらに教育活動の充実に努力していきます。

 本校は,「尚志」「至誠」「精励」の3つの校訓と,「創造力の育成」「自主・自立の精神の育成」「共生の心の涵養」という3つの教育目標を掲げて,教育活動に取り組んでいます。
 まず,中高一貫教育校としての教育です。これは,中学生と高校生が同じ敷地,同じ校舎で学ぶということだけではありません。日常の授業や部活動において中学校・高校の教員が交流しています。本日の入学式に代表される中学校・高校合同の儀式や集会,合同の学校行事である体育祭や黎明祭,生徒会活動や部活動でも,中学生・高校生がともに力を合わせて活動する姿があります。生徒たちも積極的に交流しながら,学校生活を送っています。
 次に,文部科学省から五年間の指定を受けている「スーパーサイエンスハイスクール」「SSH」です。全国では204校が指定されています。本校は,「連携による科学技術系人材の育成」を研究開発課題とし,高校だけではなく,中学校を含めた全校生徒を対象として取り組んでいます。3年目となる今年も様々な活動に取り組み,その成果を地域にも還元していきます。
 新校舎という新しい教育環境のもと,SSHを含めた全ての教育活動において,教職員一人一人が持てる力を十二分に発揮し,チームとして古川黎明の教育活動を推進します。

 さて,新入生の皆さんに2つのことを,お話ししたいと思います。
 1つ目は,「当たり前のことが当たり前にできるようになってほしい」ということです。
 社会には,たくさんの法律や規則,ルールがあります。それを守ることは当然のことです。ここでいう「当たり前のこと」とはそのことではありません。「おはようございます」という挨拶,「ありがとうございます」という感謝の気持ち,「すみません,ごめんなさい」という正直な気持ち,「お世話になりました」という思いやりの気持ち。私たちの社会は,共同生活で成り立っています。そのような言葉を素直に話すことができる生徒になってほしいと思います。
2つ目は,「学ぶ力を身につけてほしい」ということです。
 「学ぶ」とは,知識をただ覚えることではありません。知識を教わり,あるいは自分で調べ考えて身につけ,その知識を使って,物事をよく観察し,疑問を持ち,再び自分で調べ考えて,またよく教わり,新しい知識を身につける,さらに,自分で新しい課題を探して,自分の力で解決していく。このようなこと全体が「学ぶ」ということです。
 古川黎明の学習とは,押しつけられる勉強ではありません。「どうして」「なぜ」が始まりです。楽しいことばかりとは限りません。何日も悩むこともあるかもしれません。でもそれは必要なことです。まず自分で考えることが大切です。受け身ではなく,攻めることが必要です。本校の全ての先生方はその対戦を楽しみにしています。
 新入生の皆さんは,本校での中学校生活あるいは高校生活にたくさんの夢や希望を巡らせていることと思います。皆さん一人一人の喜びと決意が,この壇上までひしひしと伝わってきます。この入学式における今のその気持ちと決意こそが,これからの古川黎明での生活の意欲の源となります。初心を忘れることなく,夢や希望の実現に向け努力をしてほしいと思います。「チーム黎明」は皆さんをサポートします。一日も早く本校での生活に慣れ,積極的に学校生活に取り組むとともに,これからの学校生活で,少しずつ身も心も成長させ,充実した生活を送ることを期待しています。

最後になりますが,保護者の皆様にお願い申し上げます。本日から,お子様をお預かりいたします。保護者の皆さんのご期待に添えるように,我々教職員は,学習指導と生徒指導を両輪として,一致団結して,取り組んで参ります。また,ご家庭と密接に協力しながら,教育活動を進めて参ります。保護者の皆様におかれましては,本校の教育方針をご理解いただき,ご協力,ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 結びに,本日,ご多用のところご臨席を賜りました皆様に,心より感謝を申し上げ,式辞といたします。

 平成26年4月7日
宮城県古川黎明中学校・高等学校   
校長 庄子 英利 

平成25年度古川黎明中学校卒業式 式辞

 暦の上の春とは名ばかりで、連日の吹雪のなか、校木の白梅は、苦寒風雪を乗り越え、日一日とつぼみを大きく成長させ、その開花が待ち望まれるところです。
 この佳き日、同窓会長、中学校PTA会長、中高PTA会長をはじめ多数のご来賓、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成二十五年度宮城県古川黎明中学校 第七回 卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより教職員、在校生一同にとりましても、この上ない喜びであり、ご臨席の皆様に、心より御礼申し上げます。
 さて、ただ今、卒業証書を授与いたしました、八十名の卒業生の皆さん、これで無事に義務教育九年間の業を卒えました。ご卒業おめでとうございます。
 三年前の一月、県立中学校適性検査という難関を実力で突破して、本校第七期生として本校に入学することとなった矢先の三月、突然、東日本大震災という未曾有の災害に見舞われました。その大混乱のさなか、入学式も二週間遅れ、これから始まる中学校生活に、大きな不安を感じたことと思います。しかし、皆さんは自らも被災者でありながら、勇気を奮い立たせ、中学生としてできる様々な被災地支援活動にも進んで取り組んでくれました。この三年間、震災を忘れず、様々な試練から多くを学び、厳しい環境にも負けず頑張る姿をいつも見ることができました。本当にこの三年間、よく頑張ってくれました。
 まず、これから卒業生の皆さんのこの一年の活躍を振り返ってみたいと思います。
 スポーツ部門です。大崎市中体連総合体育大会で、バドミントン女子団体で第二位、個人でもダブルスで二チームが第三位、女子バレーボールも第三位に入賞しました。
 大崎市中体連陸上競技大会では、男子走幅跳びで大会新記録第一位、女子は、砲丸投げで第一位、走高跳びで第一位と第二位に入賞するなど、大活躍しました。他の種目でも上位入賞し、女子総合で優勝しました。
 大崎市中学校駅伝競争大会では、女子総合で第三位に入賞しました。
 さらに、女子円盤投げでジュニアオリンピック陸上競技大会全国大会に出場しました。
 次に、文化部門です。全国中学生人権作文コンテストで全国九十万をこえる応募作品から、全国第一位となる内閣総理大臣賞を受賞しました。さらに、全国小中学生作文コンクールで県優秀賞、宮城県中学校弁論大会で優良賞、少年の主張宮城県大会で優良賞を受賞しました。
 吹奏楽部は全日本中学高校生管打楽器ソロコンテスト南東北大会で金賞、合唱部は宮城県合唱アンサンブルコンテスト中学校の部で金賞・理事長賞に輝きました。
 自然科学部は、「みやぎサイエンス・フェスタ」や「日本学生科学賞宮城県審査会」で表彰されました。
 また、三年生有志が「チーム・アウローラ」を結成して参加した、第一回全国中学校リズムダンスふれあいコンクールの課題曲部門では、最優秀賞となる文部科学大臣賞受賞の快挙を成し遂げました。
 この他にも、多数の大会、コンテスト、コンクールの地区大会、県大会で入賞し、「古川黎明中学校」の底力を十二分に発揮してくれました。
 学校行事では、黎明祭でのクラスパフォーマンス、体育祭での縦割り競技、そして合唱祭。どの行事でも三年生が下級生を常にリードしている姿がとても印象的でした。
 本校は中高一貫教育校として、平成十七年に開校し「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと、教育活動に取り組んでいます。昨年度からは、文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」の指定を受け、中学校と高校の連携も深め、教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは、中学生と高校生との交流の活発化を図るために、黎明祭、体育祭などの中高合同の学校行事やあいさつ運動などの生徒会活動にも熱心に取り組んでくれました。昨年八月には念願の新校舎が完成し、教室棟の南校舎では、一階の中学生から、四階の高校一年生まで、中高生が同じ校舎で生活するようになり、一層その気持ちを強くしたものと思います。
 学校の伝統とは、脈々と受け継がれていくものではありますが、古川黎明中学校の卒業生は、皆さん第七期生を含めて、まだ五百五十七名であります。受け継ぐべき伝統も重要ですが、新たに伝統を生み出していくことも大切だと思います。後輩たちは、間違いなく多くの伝統を引き継ぎ、新しい学校づくりも継承してくれると思います。古川黎明高校や他の上級学校へ進学後も、この古川黎明中学校での生活をいつまでも忘れないでいてほしいと思います。
 もう一つ、皆さんを暖かく見守ってこられた保護者やご家族、地域の方々のご支援に対する感謝の気持ちも大切にし、決して忘れないでほしいと思います。

 次に、今日の門出に際して、卒業する皆さんにはなむけの言葉を贈りたいと思います。
 それは、臨床心理学者で、文化庁長官を務められた河合隼雄さんの著書「こころの処方箋」から、「百点以外はダメなときがある」というものです。
 「人生にも、ここぞというときがある。それはそれほど回数が多いものではない。とすると、そのときに準備も十分にせず、覚悟も決めずに挑むのは、全くばかげている。ところが、案外、そのような時でも九十点も取ればよかろう、という態度で臨む人が多いように思われる。このような人が、自分はいつも努力しているのに、運が悪いと嘆くのは、ことの道理がわかっていないと言うべきであろう。」と述べています。
 ここでいう百点とは、いわゆる試験の点数だけとは限らないと思います。どこまで頑張るのか、努力できるのかということも含む、それぞれの人の生き方と関わるものだと思います。通常の生活では、人それぞれの平均点であれば特に問題はないのだろうと思います。しかし、本当の試練は必ずいつかやってきます。前もってわかっている場合もあれば、突然やってくる場合もあると思います。そのとき、試されるのではないでしょうか。そのとき、果たして皆さんは全力を出せますか。大丈夫ですか。
 しかし、本校で三年間真剣に学習や様々な活動に正面から取り組んできた皆さんであれば、しっかりと力を蓄えてきていると信じています。そして、この時とあれば、十二分に力を発揮してくれるものと思います。
 社会の風潮に流されず、自分の意志を持ち、常に教養を高める習慣が身についていれば、いつでも百点である必要はありません。それよりも、必要な時にメリハリをつけて全力投球できる人、そして、感性豊かな人になってほしいと思います。

 保護者の皆様に申し上げます。
 お子様のご卒業、誠におめでとうございます。今日のこの姿を、三年前の姿と重ね合わせている保護者の皆さんもいらっしゃると思います。お子様方は、本当に成長しました。心身ともに大きくなりました。
 中高一貫教育校である本校で、日常生活において高校生と身近に接し、学校行事や部活動で交流し、さらに、一貫校としての独自の教育活動やSSH事業を経験することにより、お子様方は、本校教育目標にある、創造性を育み、自主・自立の精神と共生の心をしっかりと身につけてきました。今後、高校生としてもう一段の飛躍をしていくものと考えております。この三年間、保護者の皆様から本校の教育活動に対する深いご理解とともに、暖かいご支援、ご協力を賜りました。ここに、深く感謝申し上げます。
 最後になりますが、卒業生の皆さん、古川黎明中学校で学び、体験し、本校で過ごした三年間の有意義な時を忘れず、これからの高校生活をより充実させることを期待しています。皆さんが、これからも故郷の復興と未来のふるさとの発展のため、行動し続けることを心から願ってやみません。
 結びに、本日はご多用のところ、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様、保護者の皆様に厚く御礼を申し上げ、式辞といたします。

 平成二十六年三月九日
宮城県古川黎明中学校        
校長 庄子 英利

平成25年度古川黎明高等学校卒業式・式辞

 暦の上では春を迎えたものの、今だ冷たい北風が吹き付ける中、植物たちは春の太陽の光を受け確実に目覚めの季節を迎えました。校木の白梅も、苦寒風雪を乗り越え、百花のさきがけとなるべく、堅く小さなつぼみが日一日と大きく成長してきました。
 この佳き日、同窓会長の千葉 典子 様、PTA会長の伊藤 知昭 様を始め多数の御来賓の御臨席を賜り、平成25年度宮城県古川黎明高等学校第9回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより教職員、在校生一同にとりましても、この上ない喜びであり、御臨席の皆様に、心より感謝申し上げます。
 さて、ただ今、卒業証書を授与した、全日制課程普通科241名の生徒諸君、卒業おめでとう。3年前を振り返れば東日本大震災による大混乱のさなか、本当に高校生活は始まるのだろうかという不安の中、2週間遅れで行われた入学式。その後の3年間にも、様々な試練が繰り返しありました。皆さんはその厳しい環境の中でも学業を全うし、今日、晴れて宮城県古川黎明高等学校の卒業生となりましたこと、心からお祝いします。
 また、保護者の皆様におかれましても、お子様の御卒業、本当におめでとうございます。この日を迎えるまでに数多くの御苦労があったことと思います。本校でお預かりしましたお子様方は、在学中に精神的にも大きく成長し、今後自立し飛躍が十分期待できるまでになりました。心からお祝い申し上げます。
 本校は、大正9年(1920年)、旧古川高等女学校として開校以来、93年、卒業生は本日、29,180名となりました。平成17年度に、男女共学化、併設型中高一貫教育校となり、古川黎明高等学校と改称してからも、2,156名の卒業生を送り出しています。
 本校は「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと、「自ら課題を発見し解決する生徒の育成」「自立し未来に立ち向かっていく生徒の育成」「互いをよく理解し共に生きる生徒の育成」という3つの教育目標を掲げ、教育活動に取り組んできました。昨年度からは、文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」の指定を受け、教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは、中高一貫教育校である本校をよく理解し、中学生と高校生の交流をいかにして活発にしていけばよいかよく考え、黎明祭、体育祭、あいさつ運動などの学校行事に熱心に取り組んでくれました。昨年8月には念願の新校舎が完成し、教室棟の南校舎では、1階の中学生から、4階の高校1年生まで、中高生が同じ校舎で生活するようになり、一層その気持ちを強くしたものと思います。SSHでの活動でも、初年度から積極的な取組が見られ、後輩への影響力を強く発揮してくれました。
 また、高校生活の大部分を旧校舎で生活した皆さんは、旧校舎への思い出もとても強いと思います。1月に発行されたPTA広報誌「きらり」には、3年生を中心に旧校舎全てが思い出のスポットであるという声がありました。慣れ親しんだ旧校舎をいつまでも記憶にとどめておいてほしいと思います。
 さらに、部活動においては、最後の最後まで一所懸命プレーする姿は、後輩たちの脳裏にしっかりと焼き付いたことと思います。試合やコンクールは勝負です。しかし、その過程でそれまでの努力の成果や勝敗を越えた何かを感じ取ったはずです。このことは、これからの長い人生での良き思い出であり、再チャレンジやキャリアアップの目標となるはずです。努力は裏切らないといいます。これから、皆さん自身が作成していく人生の道しるべの1ページに是非加えてください。
 そして、皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族に加え、地域の皆様の御支援と御協力に対する感謝の気持ちも決して忘れないでほしいと思います。
 次に、今日の門出に際して、卒業する皆さんに2つお話ししたいと思います。
 1つは、「お陰様です」。
 何気なく使っている言葉、とても心が和やかになる言葉だと思います。これから、皆さんは進学や就職をし、社会人としての生活が始まります。高度に発達した文明社会となった現代では、私たちは、もはや全てを自給自足し一人で生きていくことはできません。私たちには様々な社会的生活が必要不可欠だということです。それは、むずかしいことではありません。普通のことをごく普通にしていればできることなのです。その基本はあいさつです。これは皆さんには何の不安もないでしょう。その次に、「お陰様です」と自分から話すことです。共同社会、共同生活を円滑にする魔法の言葉です。日本人が決して忘れてはいけない美しい言葉だと思います。
 2つ目は、柳田邦男さんの著書「気づきの力」から、「鋭い見る眼を持て」ということです。
 見る眼を鋭く豊かにするのは、豊富な知識と分析的な思考力が必要だが、それに加えて鋭敏な感覚・感性を持つことである。感性が豊かでなければ生き方を変えるような「気づき」は生じない。と述べています。
 自分の意志を持たず、社会の風潮に流され、他人の意見に翻弄されるのではなく、生涯にわたり教養を高める努力を惜しまず、自己を確立し、自立し、感性豊かに生活していくことが大切なことだと思います。しかし、「言うは易く行うは難し」です。特に感性という言葉を、冷静に見つめ、しっかりと考えていくことが、著者の言う「気づき」につながるのではないかと思います。
 最後になりますが、本校で過ごした3年間の有意義な時を忘れず、これからも、充実した日々となることを期待しています。本校校歌の一節にあるとおり「わざみがき 心きたへよ」であります。皆さんのこれからの努力が、未来のふるさと発展と充実の原動力となることを心から願ってやみません。
 結びに、本日は御多用のところ、御臨席を賜りました御来賓の皆様、保護者の皆様に厚く御礼を申し上げ、式辞といたします。

 平成26年3月1日
宮城県古川黎明高等学校 校長 庄子 英利