校長室から皆様へ

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第10回ー

    生徒の皆さんは宮城県美術館に足を運んだことがありますか。いま老朽化が問題となって移転問題が議論されているのを知っていますか。そして宮城県美術館が,日本でも名のあるコレクションを有していることを知っていますか。
 その名を「洲之内(すのうち)コレクション」といいます。作家の洲之内徹(とおる)が個人で収集した美術品で,油彩画,水彩,素描,版画や彫刻など全部で146点だそうですが,本人が亡くなった後,一時は散逸の危機もあったのだそうですが,宮城県美術館にそっくりそのまま収蔵されました。
 洲之内コレクションが評価されているのは,洲之内独自の直感で「買えなければ盗んでも自分のものにしたくなる絵」を収集し,それによって再評価された画家たちが多くいたことです。個人のコレクションが一括して美術館に収蔵されることも稀なのだそうです。また,洲之内は『芸術新潮』という有名な美術雑誌に,「きまぐれ美術館」を連載し,コレクション作家の魅力について発信し続けました。

洲之内 徹『洲之内徹が盗んでも自分のものにしたかった絵』求龍堂

                  
 今回,皆さんに紹介するこの本は,実際の絵を見ながら洲之内のが連載した文章を読むというスタイルになっており,洲之内本人の審美眼,そして彼の直感を感じることができます。洲之内コレクションを収蔵した宮城県美術館では,人気の高い作品を中心に常設展示をしています。私が好きな作品は,全体が青色で覆われ,美しい女性が頭に魚を載せた海老原喜之助の「ポアソニエール」という作品です。もしかすると皆さんの中には「あ~これ見たことある!」という猫の絵を見つける人がいるかもしれません。長谷川潾二郎の「猫」です。床が赤で,画面いっぱいに猫が寝ている絵ですが,特徴はひげが片方しか描かれていない点です。以下は「猫」に添えられた洲之内の文章です。魅力的なエピソード。見てみたくなりますよね。

 「猫」の絵だけは,6年前に完成していた。完成していると思ったので,私は譲ってくださいと頼んだ。すると長谷川さんは,まだ髭がかいていないからお渡しできませんと言った。言われてよく見ると,なるほど髭がない。「ではちょっと髭をかいてください」と私は重ねて頼んだ。すると長谷川さんはまたかぶりを横に振って,猫が大人しく坐っていてくれないと描けない,それに猫は球のように丸くなるし,夏はだらりと長く伸びてしまって,こういう格好で寝るのは年に2回,春と秋だけで,それまで待ってくれと,いうのであった。

 続きを含めて,是非手にとって読んで見て,そして県美術館に足を運んでみてください。

                        令和2年7月7日
                         校長 小川 典昭

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第9回ー

 「挑戦する読書」第9回は,まさに皆さんに挑戦して欲しい本,樋口一葉の「大つごもり」です。一葉といえば5,000円札の肖像で有名ですが,実際に作品を手にした人は少ないのではないでしょうか。その理由は,作品としては短編が多いのですが,何と言っても文体がほとんど古典といってもいいくらい難解になってしまっているからだと思います。明治時代に書かれた小説ですので,会話の部分は皆さんがいま読んでも内容を理解できるのですが,地の文は文語体です。作品に出てくる言葉やもの自体も,解説を読まないとぴんとこないことが予想されます。
 ではなぜ皆さんに紹介するのかというと,作品自体に魅力があるんです!一葉の作品は恋愛ものが多く,かつ悲しい話なのですが,読み終わって心にじーんとくるものばかり。
私は樋口一葉の作品が大好きで,東京の樋口一葉記念館には何度も足を運んでいます。今回皆さんに紹介するのは「現代語訳」です。この本は訳が大胆すぎるところはありますが,ストーリーを頭に入れてから原文にあたってもらえればと思います。実は一葉の作品は音読するととっても調子がいいんです。何度も声に出すと,原文のリズムが心地よくなってきます。おすすめです。

  現代語訳 樋口一葉 『大つごもり』 河出書房新社

 「大つごもり」のあらすじです。主人公は「お峰(おみね)」。女中として働いています。奉公先はお金持ちなのですが,その息子の石之助がお金を湯水のように遊びに使う放蕩(ほうとう)息子です。あるときお峰は唯一の血縁である伯父(お峰は両親を早くに亡くしています)が病で倒れます。お峰は,何とか休みをもらって伯父のところへ戻ります。すると伯父は,借金の利子を年内に払わないと暮らしていけないから,奉公先から「2円」を借りてもらえないかとお峰にお願いします。
 奉公先の奥さんは大変厳しい人で,借金を申し出てからずっと知らんぷり。お峰が話を切り出しても素知らぬ顔です。そんな時に伯父の8つになる息子がお峰のところにお金をとりに来てしまいます。お峰は自分はどうなってもいいと,引き出しから2円を引き抜いて渡してしまうのです。
 ここからラストシーンまでは内緒です。でもキーマンは放蕩息子の石之助です。
 タイトルの「大つごもり」の意味は大晦日(おおみそか)です。

                        令和2年6月29日
                         校長 小川 典昭

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第8回ー

 「挑戦する読書」も第8回となりました。学校休業が長引き,生徒の皆さんがこの時期だからこそじっくり時間をかけ取り組んで欲しい本を紹介しようと思い立って,この連載を始めました。「挑戦する」というタイトルは,簡単にすらすらと読める本ではなく,黎明中学校・黎明高等学校に入学したのだから,難しくても手にとって欲しい,読破して欲しいという意味を込めました。

 昨年,読書週間を前に,全校集会で岩波文庫全7巻,アレクサンドル・デュマの「モンテクリスト伯」を紹介しました。エドモン・ダンテスが無実の罪で長い年月投獄され,脱獄してお金持ちになり,モンテクリスト伯爵を名乗って自分を陥れた人々に復讐する物語です。私は「ニュースステーション」でキャスターを務めていた久米宏さんが,この作品を紹介され,夢中で7冊を読破した話に触発されました。読み始めるとどんどん作品世界に引き込まれていきます。読んでいない生徒の皆さんには是非この機会に手にとって欲しい作品です。


 A・デュマ「モンテクリスト伯」第1巻~第7巻 岩波文庫

 さてここからが今回の作品紹介です。みなさんはこれまで本を読みなさいと,様々な機会にお話しされてきたことと思います。なぜ本を読まなくてはならないのか!本を読むことでどんな力がついてくるのか!その明確な答えを知っていますか。私は国語の教員ですのでその答えは私なりに生徒たちに話してきたつもりでしたが,この本を読んで,その答えが明確になりました。答えはここでは明かしませんが,この本では,小さい頃に良質の絵本に触れることで,読書世界がどんどん広がっていくことを紹介します。絵本の好きな生徒にはこれも読んでみよう,あれも・・・と思わせてくれる,魅力的な絵本紹介本にもなっています。今回は難解な本ではありません。なるほどそうだよね!と頷きながら読んでいくことになりそうです。

 脇 明子(わき あきこ)「読む力は生きる力」 岩波書店

 筆者は,出版当時,ノートルダム清心女子大学教授で,幼稚園や小学校の先生を志す学生たちが「本を読めない」と訴えることが多くなり,危機感を感じるようになったことが出版の契機だったようです。将来,同じような職業を志す生徒は必読です。

    <この本の帯に記されている文章を紹介します。>
 「これは,生きる歓びを子どもたちに伝えるための読書論。子どもと子どもの本の世界への,たしかな道しるべ。子どもにかかわって生きる人への激励の書です。」 

                                  令和2年6月19日

                                   校長 小川 典昭

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第7回ー

 挑戦する読書第7回も前回に続いて伝記です。明治初期,荻野吟子(おぎのぎんこ)という日本初の女医とな人物の物語です。

 渡辺 淳一『 花埋み(はなうづみ)』 集英社文庫

 明治維新まもない頃,農家に嫁いだ「ぎん(本名)」は病を得て離縁され,実家に戻ります。その病がもとで女医になろうと決意します。当時,女性は医学の世界に入門さえできませんでした。学問を志すことは難しく,医者は男性の仕事とされていたのです。その状況をいかにして乗り越え,日本初の女医が誕生したのか・・・
 
 古川女子高校看護科の歴史を受け継ぐ本校にあって,看護系の大学・専門学校に進学する生徒は今年も多いと思います。その生徒たちには是非一読をお勧めします。進路先が医療看護系でなくとも,女性に対する偏見との闘いに打ち克ち,明治18年,35歳にして念願の政府公認の医者として,産婦人科を開業した信念のひと,荻野ぎん63年の一生を読んで欲しいと思います。作家,渡辺淳一の名作です。                                   令和2年6月12日
                           校長 小川 典昭

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第6回ー

 生徒の皆さん!東京銀座で有名な木村屋のあんパンを知っていますか。明治の初めに誕生したあんパンですが,元祖はここ木村屋です。あまりにも有名ですから知っている人も多いと思います。それでは新宿中村屋のカレーパンはどうですか。クリームパンの元祖のお店ともいわれていますが,現在でもインドカレーといえばここ中村屋が有名です。今でも中華まんじゅうや月餅など全国展開の有名なお店ですが,創業者は「相馬黒光(そうま こっこう)」という女性です。今回は仙台出身,作家で実業家の彼女の伝記です。

 宇佐美 承『新宿中村屋 相馬黒光』 集英社
 
 最近は伝記を読まなくなりました。一昔前は幼少期から偉人伝を手に取り,こんな偉い人になりたいと子供心に思ったものです。エジソンやヘレンケラー,ガンジーやマザーテレサ。日本だったら野口英世や福沢諭吉,田中正造・・・もしくは歴史上の武将たちといったところでしょうか。


 相馬黒光は本名は良(りょう)なのですが,あまりの才能と,激しい性格から「きらめく才気を黒で隠しなさい」と当時の校長からつけられたペンネームだそうです。
 私は学生時代,近代文学の講義で,地元出身黒光の「黙移(もくい)」は当然読んでいるものとして質問され,私の周囲が難なく質問に答えているのを横目で見ながら,古本屋に本を探しに行ったことを覚えています。


 黒光は結婚後,夫とともに中村屋を繁栄させるのですが,その傍ら,絵画や文学のサロンを作り,いまとなっては大変有名な彫刻家や画家を援助しました。有名なのはインドの独立運動のボースらをかくまったり,ロシアの詩人エロシェンコを自宅に住まわせて面倒を見たりと,旧仙台藩士の娘でありながら,キリスト教の洗礼を受け,現在の宮城学院,横浜のフェリス女学院,そして東京の明治女学校の島崎藤村らに学んだ相馬黒光。明治初期,志を持った少女「アンビシャスガール」と呼ばれ活躍した,地元宮城の彼女の人生に触れてみて下さい。

                                       令和2年6月6日
                                       校長 小川 典昭

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第5回ー

 先週と今週の2週にわたって登校日が設定され,生徒の皆さんの元気な声を久々に聞くことができました。校長室の前を通りかかった生徒と目があって,挨拶をしてくれる・・・そんな何気ないシーンが嬉しくて・・・私たち教員にとって疲れを癒やす一番の薬は生徒の笑顔なんだと改めて感じました。

 さて「挑戦する読書」第5回です。今回はいわゆる読書案内本の紹介です。しかし,「挑戦する」読書案内です。手応えあります!

 2009年4月から7月まで,作家である辻原登(つじはら のぼる)氏が東京大学で行った「近現代小説」という講義をもとに構成された本です。14回の講義のうちの10回が収録されています。文学に興味がある生徒は是非10代で読んでおいて欲しい本。東大の講義ですからそう簡単に理解できる内容ではないけれど,読み応えがあって,難しいなあと感じつつも読み進めていくと,いつの間にか講義に引き込まれ,これまで読んだことのない世界文学を手に取ってみたくなること間違いなしです。

 辻原 登『東京大学で世界文学を学ぶ』 集英社文庫
 
 日本近代文学を専攻した私は,近現代の世界文学を読む機会が少なかったのですが,少ない読書経験の中からもう一度読んでみようと,読み返した作品がセルバンテスの「ドン・キホーテ」。この本を読んでから読み返してみると面白さが全然違うのです。また「静かに爆発する短編小説」という副題がついた第4講義では,私はこれまで聞いたことのない,読んだことない作家(後から有名な作家であることはわかるのですが・・・)の短編がいくつも収録されていて,実際に短編を学生と先生が読んでいて,そのやりとりのシーンを読むことができます。辻原氏の解説がとても興味深くて,私はこの本を読破する前に読みたくなって,エルンスト・ブロッホや,ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編を探しに本屋に向かったほどです。
 実際の講義に参加していたかったなあと感じました。でも・・・本になっているので難しいところは読み返して理解できますが,直接その場で聞いていたら理解できなかったかもしれませんね。紹介した講義はこの二つです。

  ○第4講義:私をどこかへ連れてって-静かに爆発する短編小説-
  ○第5講義:燃えつきる小説-近代の三大長編小説を読む-
         ①セルバンテス「ドン・キホーテ」

 どうでしょう。挑戦する価値ありの一冊です。

                                         令和2年5月29日
                                          校長 小川 典昭

校長から生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第4回ー

  6月1日(月)からようやく学校再開です。中高の時差登校,40分授業とはなりますが,一日を通して授業を展開します。生徒のみなさんは先週,今週の登校日を通して連絡のあった内容を十分に理解し,授業再開に備えて下さい。先生方も感染予防に向けて,「学校の新しい生活様式」を確認し,皆さんの登校を待っています。3ヶ月に及ぶ休業中,ロイロノート等での学習に真面目に取り組んだ皆さんの努力に心から敬意を表します。

 さて「挑戦する読書」第4回です。今回は国立西洋美術館開館に至るある一人の日本人の物語。それまで西洋の有名な画家の作品を雑誌や複製画でしか見ることができなかった日本の画家たちや,青少年のために全財産をかけて奔走した「松方幸次郎」の物語です。

 原田マハ 『美しき愚かものたちのタブロー』 文藝春秋
 
 東京上野公園内,動物園へと向かう右手に国立西洋美術館が建っています。私も何度も足を運んだ美術館ですが,中に入ると「松方コレクション」なる説明書きがあって,読んだ記憶はあるのですが,実はこの実業家である松方幸次郎が,ロンドンとパリで,命をかけて買い集めた作品だったことはあまり気にも留めませんでした。

 この本を読んでみると戦争によってその作品がフランス政府によって接収されてしまい,日本での本格的な美術館建設が頓挫してしまいそうになったこと。取り返そうと必死になった当時の吉田茂首相のエピソードや,クロードモネとの親交,ゴッホやルノアールといった有名な画家の作品との出会いの経緯も描かれ,美術好きの人であればどんどん作品の世界に引き込まれていきます。

 日本人は世界でも有名な美術好きの国といわれます。「ほんものの絵をみたことがない日本の若者たちのために,ほんものの絵が見られる美術館を創る。それがわしの夢なんだ。」と語った松方幸次郎の理想と信念に触れてみて欲しいと思います。日本に松方幸次郎がいなかったら,画家を目指す青年たちはどうなっていたのだろう・・・                        
                          令和2年5月25日
                          校長 小川 典昭
 

校長より生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」ー第3回ー

宮城県においても非常事態宣言が解除され,長かった学校の臨時休業にも光が見えてきました。来週は分散登校ではありますが,ようやく生徒の皆さんと会えることになりました。短時間ではありますが,18日(月)から20日(水)まで,まずは中学校と高校が午前午後に分かれて登校することになります。生徒職員お互いに,感染予防に十分留意し,6月1日の授業再開に向けての準備をしたいと思います。先生方も笑顔いっぱいです。

 さて「挑戦する読書」第3回です。今回は戯曲(ぎきょく)です。平たくいえば,お芝居の台本ですね。仙台一高出身で仙台文学館初代館長さんとしても有名な,劇作家です。

 井上ひさし 『雨』 新潮文庫                         

 私はお芝居が好きです。理由の一つは,こんなことを言うと演劇人から叱られるかもしれませんが,役者さんを生(なま)で見られること。芝居の面白さと,旬の役者さんを同時に味わえるという点で,井上ひさしの劇団「こまつ座」の芝居を多く観劇しています。中でも今回紹介する「雨」は,およそ10年ほど前に東京にでかけ,そのストーリーのすばらしさ,どんでん返しの結末に驚き,今でも印象に残っている作品です。見終わってから,この本を何度か手にとって読み返したほどです。(東京まで出かけたのは,主役の市川亀治郎(今の猿之助)と,永作博美を生で見たかったということなんですが・・・)

 昨年,本校に来校し,大講義室で夏目漱石「こころ」について講演され,引き続いて図書館で芥川龍之介「羅生門」について授業して下さった小森陽一先生を,皆さん覚えているでしょうか。新潮文庫を手に取ってみると,実は,解説を書いていらっしゃるのが小森先生でした。先生の解説の冒頭を紹介すると・・・

 「江戸の金物拾いの徳(とく)が,外見がそっくりだと言われて,羽前国平畠藩の紅花問屋の当主である紅屋喜左衛門に成りすまそうとして,逆に仕掛けられていた罠にはめられてしまうのが『雨』の物語です。」

 金物拾いという貧乏な境遇の徳が,裕福な紅花問屋(舞台は井上ひさしの生まれ故郷山形です)の主人に仕立て上げられ,自分もその気になって江戸の言葉を捨て,金物拾いの習性も必死で直して,本来の自分を次々と消していきます。ところがその努力が,最後になって仇となってしまうのです。実は平畠藩の財政を救うために紅花の凶作として幕府を欺いていたことがばれて,その責めを喜左衛門一人にかぶせてしまおうとのたくらみだったのですが,別人であることを証明しようとすると・・・

 戯曲というとなかなか手にすることが少ないと思います。しかしながら井上ひさしの作品は読み応えがあり,読み進めるうちに作品世界に引き込まれていくのです。この『雨』はおすすめです。        

                               令和2年5月15日
                                校長 小川 典昭

校長より生徒の皆さんへ「挑戦する読書-第2回-」

 

 臨時休業が今月末31日(日)まで延長されました。しかしながら,18日(月)からは中学校,高校ともに学年ごとに登校日を設定し,生徒の皆さんと会えることができるようになりました。学校においても,来週一週間は感染防止に向け,万全の準備をして皆さんの登校を待ちたいと思います。学校からの黎メールをしっかり確かめ,登校に備えて下さい。

 さて「挑戦する読書」第2回です。今回はフランス文学です。

  モーパッサン『脂肪の塊』岩波文庫

 舞台は普仏戦争。プロイセン軍に占領されたフランス北部ルーアンという都市に住むフランス人たちが乗合馬車に乗って街から逃れようとしているところ。その馬車には「脂肪の塊(ブールドシェイフ)」と呼ばれた娼婦と,国会議員やワイン問屋を営むお金持ちの夫婦,上流階級の夫婦,伯爵夫妻,そして修道女2人などが乗車していて,馬車の中は当時のフランス社会を象徴する空間でした。
 作品の前半では,乗客は取るものも取りあえず街を出ようとしたことで,空腹に苦しむ乗客が描かれます。ところが食料がたくさん入ったバスケットを取り出したのがブールドシェイフ。空腹に耐えかねていた人々に対し食料を勧めると,それまで車内で冷たい視線を浴びせ続けていた人々の態度は一変・・・。

 物語は馬車が占領されている場所を通る佳境に入ります。

 通行を禁止され一行は足止めを食らいます。なかなか出発を許されず,命の危険を感じ始めた一行は、空腹を満たしてくれた恩義も忘れ、ブールドシェイフに対し,ことば巧みに犠牲の精神を説いて,プロイセン軍の士官に身を売らせようとします。ここから結末までは是非手にとって読んで欲しいと思います。

 実は他人に対する思いやりを持っていたのは娼婦ひとり。社会的に蔑まれている娼婦を主人公に人間の醜さを浮かび上がらせたモーパッサンのデビュー作です。私は大学生の時に初めて読んで,それまで外国文学を読まずにきた自分自身に焦りを感じた作品です。人間の内面に鋭く切り込んだこの作品に挑戦してみてはどうですか!

                       令和2年5月8日
                                校長 小川 典昭
 

 

校長より生徒の皆さんへ!「挑戦する読書」-第1回-

 学校の臨時休業が再延長となりました。再開を心待ちにしていた生徒の皆さんにとっても,私たち教職員にとっても,辛い時期が続くことになります。先生方も気持ちを切り替えて,皆さんの登校を心待ちにしながら,教材研究,課題作成に集中しています。
 休業中にあっても,本校の先生方とロイロノート等でつながり,自学自習に取り組んでいる生徒の皆さんの学習意欲に心から敬意を表するとともに,この時期だからこそ取り組める読書を!との思いから,普段,あまり手にする機会のない本を紹介してみたいと思い,ペンを執りました。

 第1回は・・・

 保坂和志『「三十歳までなんか生きるな」と思っていた』草思社

 この本は,私が国語の教員として,小論文の受験指導で目にしたのが最初でした。何と言ってもこのタイトルが衝撃的です。 本の帯に綴られている言葉には”結論に逃げ込まずに、「考える」行為にとどまりつづけろ! ”とあり,読者に対し,真に「考える」ことの意味を問い,読者を本質的な思考に導く書であることが,おぼろげながら伝わってきます。
 中学・高校時代は,自分とは何か,人は何のために生きるかといった自分自身との対話の中で苦しみ,正解にたどりついたとは思えずに挫折感ばかりを覚える時代なのかもしれません。しかし,このもがき苦しむ時間が青年期には必要です。一般化され,目の前に投げ出された結論に飛びついてしまっては,自分の前に立ちはだかる壁を前に逃げ出すことばかりを選択する大人になってしまう。この答えのない哲学的な問いに耐えうる粘り強さを身に付けることができるのも青年期なのです。
 「十代のときに感じる世界の手触り」「わかるという檻」「”才能”なんて関係ない」「頭の働きは二十代がピークなのか」「”自分の考え”は”自分の考え”ではないかもしれない」「三十歳になるなんて思ってなかった」・・・・
 この本に私は40代で出会った。生徒の皆さんには,今だからこそお勧めする本。時間をかけてじっくり読んでみてほしいと思う本です。
                                              令和2年5月1日
                                              校長 小川 典昭

創立記念日に寄せて

 本日4月17日は創立記念日です。大正9年(1920年)に古川高等女学校が開校,その後,古川女子高等学校,そして古川黎明中学校・高等学校と変遷し,今日記念すべき100周年を迎えました。本年10月23日には100周年記念式典が予定されております。

 創立記念日に寄せて,3月に刊行された生徒会誌「白梅第62号」に寄稿した文章を掲載します。私自身が感じる教員という職業の魅力についてしたためました。学校が再開され,黎明中学校・高等学校の生徒たちと一緒に学べる日が一日でも早く訪れることを切に祈っています。                

 

                 「教え子のラグビージャージ」
                 ~一途に!そしてひたむきに!~                            <白梅第62号の表紙>                                    校長 小川 典昭
 2009年11月,ユアテック仙台スタジアムの最前列,時計を見ながら残り時間をカウントダウンする自分がいた。じりじりと時間が過ぎる。こんなにも時間がたつのを遅く感じるのは,競技時間に制限がないソフトテニス競技を長く経験してきたからだろうか。

 絶対王者仙台育英高校ラグビー部を追い詰め,残り時間あと5分となって3点をリードする仙台三高ラグビー部。この試合に勝てば全国大会花園出場!「はやく試合終了のホイッスルが鳴れ!」と何度時計を見たことか。

 押し込まれ,ノーサイドの笛寸前に逆転のトライを許す。育英の選手たちの目には涙が溢れる。しかしそれはうれし涙というよりは自分たちの代で連続優勝が途切れてしまう恐怖心から逃れた安堵の涙であったように感じられた。「万事休す!」と肩を落とした私たち応援席に聞こえてきたのは「まだだ!いくぞ!」と仲間を鼓舞する聞き覚えのある声。左右の鎖骨骨折を乗り越え,力強く選手を牽引する主将の声だった。諦め,うなだれる選手は一人もいない。力強い主将の声に促され,全員が走り出す姿に心打たれた。

 入学してきたばかりの頃は体の線は細く,繊細な性格もあり,グラウンドに向かう後ろ姿は見るからに弱々しかった。常にどこかしら怪我を負い,担任として何度か転部を進めたような記憶がある。それが浪人生活を経て関東大学ラグビー界の名門,早稲田大学ラグビー部に入部したとの知らせを受け驚いた。

 無名の選手には厳しい世界と知りつつ挑戦するのだから,余程の覚悟が必要である。どこにその強靱な精神が隠されていたのだろう。そんなにもラグビーという競技には魅力があるのかと当時の私は不思議に思ったのを覚えている。

 日本中を沸かせたラグビーワールドカップが閉幕,宴の後の集客を心配する声をよそに,社会人ラグビーや高校ラグビーに観客がわんさと詰めかけている。強豪を次々に破り,決勝トーナメントに進出したことが盛り上がりの要因ではあろうが,「ONE TEAM」をスローガンに,外国出身選手が日の丸を背負い,母国を相手に闘う姿は,日本人の心を揺さぶり,目頭を熱くした。リーチ主将を先頭に肩に手を乗せ,全員が一つになり入退場するシーンは,これからの日本が目指す国際性豊かな社会を体現するかのようなわくわく感をも感じさせた。さらに,活躍した選手が自分ばかりに脚光を浴びるのを嫌い,「自分の役割に過ぎない」とコメントする選手の言葉を聞くにつけ,ラグビーという競技の魅力に改めて気付かされた。敵も味方もない,ましてや日本人や外国人の区別もない。そこにあるのはラグビー競技の歴史が育んだ精神性,選手同士への「敬意」なのだと。

 早稲田大学2年生に在籍時,春先に母校を訪れた際,一緒に食事をする機会があった。肩幅が1・5倍,私を見下ろすような体格で現れた彼は,この2年間で一般受験で入部した多くの部員が退部してしまったことや,レギュラーになることは至難の業であることを淡々と語った。しかし,彼の声は憧れの臙脂と黒のジャージを,いつか公式戦で着るんだという強い決意に溢れていた。

 それから2年後,私の携帯に留守電があり,現役最後の試合でベンチ入りし,あこがれのジャージを着ることになったこと,そして是非応援に来て欲しいという,彼にしてはちょっと興奮気味の声があった。部活の顧問でもない私に対し,卒業してからも丁寧に連絡をくれる彼に,教員であることの喜び,嬉しさを感じ,感謝の気持ちでいっぱいになった。 ワールドカップを放映するテレビカメラはピッチサイドで闘っている選手の一挙手一投足に一喜一憂し,必死に応援するイレギュラーの選手を映し出す。そんな時,ふとあこがれのジャージを着て,ピッチサイドでレギュラーを支えていた教え子の姿が重なる。あのとき彼はどんな気持ちでピッチサイドに立っていたか。夢を諦めず最後の最後にベンチ入りの座を勝ち取り,レギュラーと同じジャージを着て誇らしげだったか。ピッチに立つ選手たちを眺めながら試合に出場できない悔しさを改めて感じていたのか。それともそんな感情はとうに忘れ,選手・ベンチが一体となってともに闘っていたのだろうか。その後就職の報告に現れた彼に,私は尋ねることができなかった。自らが信じた道を一途に突き進み夢を叶えた彼に,聞いてはいけないような気がした。

 令和の時代が始まり,近い将来,人工知能が人間を凌駕する時代が到来する,そんな不安が世の中を覆っている。人間らしさとは何か,人間が人間である根源は何か。これまであまり触れることがなかったこれらの問いに真剣に向き合わなければならない。ピッチサイドで憧れのジャージを着て,競技生活を終えた教え子から教えられる。夢を追いかける純粋なまでの「一途さ」は,人の心を震わせ,原点に立ち返らせる。一人の人間の成長過程を見守ることのできる教師という素晴らしい職業。残り少なくなった教員人生を奮い立たせてくれる。

「創立100周年,そして新たな時代へ~SSH2期目のスタート~」(関東同窓会寄稿文)

 古川黎明中学校・高等学校が誕生し,今年で15年目,そしていよいよ来年は創立100年の記念の年を迎えようとしております。関東支部同窓会の皆様には,日頃より本校の教育活動にご理解いただき,物心両面にわたりご支援を頂戴しておりますことに深く感謝申し上げます。
 私は4月に着任いたしました小川典昭と申します。前勤務地は3月をもって62年の歴史に幕を下ろし,閉校となった県南白石市の「南中学校」です。国語の教員として長く高等学校に勤務し,中学校勤務は校長として初めての経験でした。閉校にあたっては地域の方々をはじめ,多くの皆様のご支援をいただきました。地域の拠点として中学校が果たす役割の重さを肌で感じるとともに,学校という社会において,いかに人の温もりや思いやりが生徒の心を育むものなのかを,改めて実感いたしました。この貴重な経験を県内初の中高一貫教育校である本校の更なる発展に結びつけられるよう,誠心誠意努力することが私に課せられた使命と思っております。
 さて,本校は今年度,文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の2期目の指定をいただきました。1期目終了後2年の準備期間を要しましたが,職員一丸となっての必死の努力が実を結んだ結果です。1年に750万円,5年で3750万円の予算で,大崎地域で活躍するトップリーダーを育てます。今年は世界農業遺産に認定された「大崎耕土」に学びながら,ゆくゆくは本校が大崎地域全体の拠点として活躍する「大崎サイエンスコンソーシアム」構築を目指します。SSHの2期目の指定は「令和」の時代の始まりと相俟って,本校生徒の前途を明るく照らしているかのような朗報となりました。
 昨年3月の卒業生も,本校始まって以来の国公立大学現役合格者50名を突破,勢いに乗っています。また,県内有数の充実した施設・設備を誇る本校にあって,生徒たちは新入部員を迎え,部活動にも精力的に取り組んでおります(写真は4月に大崎市の広報表紙を飾った書道部,そして河北美術展に3名同時入選の快挙を成し遂げた美術部の生徒たちの様子です)。
 古川黎明中学校・高等学校がますます発展し,先輩方の輝かしい伝統に花を添えられるよう,また,100周年記念事業が成功裡に終えられるよう,職員一同精一杯頑張ってまいります。関東支部同窓会の皆様方の一層のご健勝とご活躍をお祈り申し上げると ともに,今一段のお力添えを賜りますようお願い申し上げ,ご挨拶とさせていただきます。

 

 

 

平成29年度古川黎明中学校・高等学校入学式 式辞

 やわらかな日差しとそよふく風に、希望の春を迎える季節となりました。本日この佳き日に、本校PTA会長鈴木優幸様,同窓会会長千葉典子様をはじめ、多くのご来賓の方々、並びに保護者の皆様方のご臨席のもと、平成二十九年度入学式を挙行できますことは、まことに喜びに堪えません。
 ただいま、中学校百五名、高等学校二百三十二名の新入生を迎え入れることができました。教職員、在校生を代表しまして心から歓迎いたします。
新入生のみなさん、入学、本当におめでとう。
また、保護者のみなさまにおかれましても、本日の我が子の晴れ姿を目の当たりにされ、感慨もまた一入(ひとしお)のことと存じます。心からお祝い申し上げます。おめでとうございます。
 さて、本校は、大正九年に創立して以来、今年度で九十七周年を迎える、長い歴史と伝統を誇る学校です。平成十七年に、県内初の併設型中高一貫教育校「古川黎明中学校・高等学校」として再スタートをし、十三年目を迎えました。
 本校では、「想像力の育成」、「自主・自立の精神の育成」、「共生の心の涵養」の三つを教育目標に掲げ、「確かな知性、旺盛な自立心、広い共生の心をもって、自己の使命を見出し、国際社会に貢献する人材」の育成を目指して教育活動に取り組んでおります。
 平成二十四年度から進めてきたスーパー・サイエンス・ハイスクール事業はこの三月をもって第一期目が終了し、今年度は一年間の経過措置となりました。来年度からの再指定を目指して取り組みを続けていく運びです。
 ところで、この校舎は三年前に完成した真新しいものであり、またこの秋までは、旧校地にサッカー、野球、ソフトボール、ソフトテニス、ハンドボール、弓道などのスポーツ施設が整備される予定です。完成の暁(あかつき)には、一層充実した教育環境を有することになります。本校では、この恵まれた教育環境のもと、中高一貫教育校としてさらに魅力あふれる学校づくりを推進して行くべく、全教職員が一枚岩となって持てる力を十二分に発揮し、教育活動に取り組んで行こうと決意を新たにしているところです。
 新入生のみなさんは今日からスタートする古川黎明での生活に期待と希望で胸をいっぱいにふくらませていることと思います。中学校の三年間は大人への入り口、高校の三年間は大人への出口と言われます。みなさんがこれから迎える学校生活は、大人社会への準備期間であり、みなさんの今後の人生の道探し・道づくりの時期になるとても大切な日々でもあります。みなさんの今後の人生を実り豊かなものにするために、これからの古川黎明での生活をぜひ有意義で充実した日々にしていただきたいと思います。
 そこでこれからの古川黎明での生活をスタートさせるにあたり、みなさんに本校の校訓「尚志・至誠・精励」についてお話します。
 一つ目の「尚志」は、「志を高く持ち、目標を掲げよ」ということです。私は、人生で大事なことは夢を持つことであるととらえております。夢は人を強くします。夢は人を励まします。夢は人が迷ったとき、道を照らす星になってくれます。若いみなさんには、ぜひ、夢を大きく持ち、あきらめることなくその実現に向けてこれからの生活を頑張っていっていただくことを大いに期待しています。
 校訓の二つ目の「至誠」は、「普段やらなければいけないことを、真剣に、誠心誠意おこなう」ということです。これは、幕末の思想家吉田松陰が門下生に語り続けたもので、「至誠にして動かざるものは、未だこれあらざるなり(精一杯心を込め、やるべきことを尽くせば、それで動かされない人はいない)」という言葉が有名です。みなさんにたとえると、勉強はもちろん、部活動や生徒会活動、学校行事、清掃、友だちづきあい、家庭でのお手伝いなど、何事にも正面から向き合い、手を抜かずに真剣に取り組むことが大切です。
 三つ目の「精励」は、文字どおり「精を出して励む」ことです。何をやるにしても、最後まであきらめずにコツコツと粘り強くやり続ける事が大切です。「コツコツが勝つコツ」。イチロー選手も「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道である」と、努力を続けることの大切さを話しています。これからの学校生活の中で、勉強や部活動はもちろん、何事にも諦めることなく、粘り強く取り組んでください。努力は必ず報われます。
 以上、本校の校訓についてお話しました。これから始まる学校生活で、いろいろなことに挑戦し、持てる力を存分に発揮し、さまざまな経験を積んでください。そして、自分をたくましく成長させていってください。
 先生方はみなさん一人一人が古川黎明の生徒としての誇りと自信を持って、充実した学校生活を送ってもらえるよう、力を合わせて支援し、全面的に協力していきます。私たちもがんばります。みなさんもがんばってください。
 保護者のみなさま、本日からお子様を卒業まで、本校でお預かりすることになりました。この古川黎明中学校・高等学校の学舎の中でお子様が大きく成長し、卒業の時にはそれぞれ希望した進路が達成できますよう、教職員一同最善を尽くす所存です。
 中学校・高校時代は、子どもたちが責任ある大人として、自立していく重要な過程のまっただ中にあり、成長と変化が著しいときです。保護者のみなさまにおかれましては、お子様の努力の様子を、常に温かく、時には毅然として見守っていただきますようお願いいたします。
 今後、教育を進める中で、ご家庭との連携がますます重要となってまいります。今後とも本校へのご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 結びに、ご多用の中、ご臨席を賜りましたご来賓、並びに保護者のみなさまに重ねて感謝を申し上げますとともに、新入生のみなさんがこれからの学校生活の中で、互いに励まし合い、支え合いながら切磋琢磨し、たくましく成長してくれることを大いに楽しみにして、式辞といたします。

        平成二十九年四月七日
宮城県古川黎明中学校・高等学校 校長  阿部 修一

平成28年度古川黎明中学校・高等学校入学式 式辞

 やわらかな日差しと心地よい風に、生命が躍動する希望の春を迎える季節となりました。今日のこの雨は,大地に潤いを与え,草木の命をはぐくむ,まさに恵みの雨といったところでしょうか。諏訪公園の桜の花も咲き始めたこの佳き日に、本校PTA会長窪田浩昌様,同窓会会長千葉典子様をはじめ、多くのご来賓の方々、並びに保護者の皆様方のご臨席のもと、平成二十八年度入学式を挙行できますことは、まことに喜びに堪えません。
 ただいま、中学校百五名、高等学校二百四十名の新入生を迎え入れることができました。教職員、在校生を代表しまして心から歓迎いたします。
 新入生のみなさん、この度の入学、本当におめでとう。また、保護者のみなさまにおかれましても、本日の我が子の晴れ姿を目の当たりにされ、感慨もまた一入(ひとしお)のことと存じます。改めまして心からお祝い申し上げます。おめでとうございます。
 さて、本校は、大正九年に、志田郡立高等女学校として創立し、戦後の学制改革により古川女子高等学校となり、ここ大崎の地での女子中等教育の振興に長らく力を尽くしてまいりました。そして、平成十七年には県立高校の男女共学化の流れにより、県内初の併設型中高一貫教育校「古川黎明中学校・高等学校」として再スタートを切りました。創立以来、今年度で九十六周年を迎える、長い歴史と伝統を誇る学校です。
 本校は、「尚志・至誠・精励」の校訓のもと、「想像力の育成」、「自主・自立の精神の育成」、「共生の心の涵養」の三つを教育目標に掲げ、「確かな知性、旺盛な自立心、広い共生の心をもって、自己の使命を見出し、国際社会に貢献する人材」の育成を目指して教育活動に取り組んでおります。
 平成二十四年度からは、未来を担う科学技術系人材を育てることをねらいとする文部科学省指定事業、スーパー・サイエンス・ハイスクールの指定を受け、理数系教育の研究開発を続けているところです。
 一昨年、待望の新校舎が完成しました。新しく充実した環境のもと、中高一貫教育校として魅力あふれる学校づくりを推進して行くべく、全教職員が「チーム黎明」として持てる力を十二分に発揮し、教育活動に取り組んで行
こうと決意を新たにしているところです。
 新入生のみなさんは今日からスタートする古川黎明での生活に期待と希望で胸をいっぱいにふくらませていることと思います。中学校の3年間は大人への入り口、高校の3年間は大人への出口と言われます。みなさんがこれから迎える学校生活は、大人社会への準備期間といえるものです。古川黎明での生活は長い人生のうちでは僅かな年月ですが、この古川黎明での生活がみなさんの今後の人生の道探し・道づくりの時期になるとても大切な日々でもあります。みなさんの今後の人生を実り豊かなものにするために、これからの古川黎明での生活をぜひ有意義で充実した日々にしていただきたいと思います。勉強はもちろん、部活動や生徒会活動にも積極的に参加してください。そしていろいろなことに主体的に意欲的に果敢にチャレンジしてください。
 これからの学校生活を充実したものにするために、みなさんに三つの「気」を大切にしてもらいたいと思います。
 一つ目は「元気」です。何でもそうですが、物事をしっかりと行っていくためには元気が大切です。毎朝、「おはようございます」の元気なあいさつで、一日をスタートさせましょう。笑顔で元気に挨拶のできる生徒になってください。
 二つ目は「やる気」です。元気であれば、やる気が出ます。何事でも、やる気を持って、前向きな姿勢で主体的に取り組んでいくことが大切です。失敗を恐れる事はありません。失敗をするから成功があるのです。待ちの姿勢
では何も変わりません。何でも思い切ってやってみることが大切です。
 三つ目は「根気」です。何をやるにしても、最後まであきらめずに、コツコツと粘り強くやり続ける事が大切です。「コツコツが勝つコツ」。これからの学校生活の中で、勉強や部活動はもちろん、何事にも諦めることなく、粘り強く取り組んでください。
 以上、「三つの気」、「元気・やる気・根気」を大切にして、これから始まる学校生活で、いろいろなことに挑戦し、持てる力を存分に発揮し、さまざまな経験を積んでください。そして、自分をたくましく成長させていってください。
 先生方はみなさん一人一人が古川黎明の生徒としての誇りと自信を持って、充実した学校生活を送ってもらえるよう、力を合わせて支援し、全面的に協力していきます。私たちもがんばります。みなさんもがんばってください。
 保護者のみなさま、本日からお子様を卒業まで、本校でお預かりすることになりました。この古川黎明中学校・高等学校の学舎の中でお子様が大きく成長し、卒業の時にはそれぞれ希望した進路が達成できますよう、教職員一同最善を尽くす所存でございます。
 中学校・高校時代は、子どもたちが責任ある大人として、自立していく重要な過程のまっただ中にあり、成長と変化が著しいときです。保護者のみなさまにおかれましては、お子様の努力の様子を、常に温かく、時には毅然として見守っていただきますようお願いいたします。
 今後、教育を進める中で、ご家庭との連携がますます重要となってまいります。今後とも、本校へのご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
 結びに、ご多用の中、ご臨席を賜りましたご来賓、並びに保護者のみなさまに重ねて感謝を申し上げますとともに、新入生のみなさんがこれからの学校生活の中で、互いに励まし合い、支え合いながら切磋琢磨し、たくましく
成長してくれることを大いに楽しみにして、式辞といたします。

 平成28年4月7日
宮城県古川黎明中学校・高等学校  校長 阿部 修一

平成27年度古川黎明中学校・高等学校入学式 式辞

 黎明に春を告げる白梅はいつになく満開が早く,諏訪公園の桜がまもなく開花の時期を迎えようとしています。
 この佳き日,PTA会長,同窓会長をはじめとするご来賓の皆様のご臨席を賜り,平成27年度,宮城県古川黎明中学校・高等学校の入学式を挙行できますことはこの上ない喜びであります。ご臨席の皆様に厚くお礼申し上げますとともに,本日,晴れの日を迎えられました保護者の皆様に心よりお喜びを申し上げます。
 ただいま入学を許可した中学校105名,高等学校全日制課程普通科228名の新入生の皆さん,入学おめでとう。教職員及び在校生一同,皆さんの入学を心より歓迎します。
 本校は,大正9年に志田郡立古川高等女学校として開校以来,宮城県古川高等女学校をへて,戦後の学制改革により宮城県古川女子高等学校となり,80年以上にわたり大崎地区の女子教育の中心校として,県内のみならず国内外に優れた人材を送り出してきました。平成17年4月には,宮城県内の公立学校として初めてとなる男女共学,併設型中高一貫教育校「宮城県古川黎明中学校・高等学校」としての歩みを始め,そして今年,古川高等女学校から数えて95周年を迎えました。卒業生は既に29,400名を超え,古川黎明中学校の卒業生も636名を数えます。5年後の100周年に向けて,尚一層充実した教育活動を推進しているところであります。
 本校は,「尚志」「至誠」「精励」という三つの校訓と,「創造力の育成」「自主・自立の精神の育成」「共生の心の涵養」の三つの教育目標を掲げ,「確かな知性,旺盛な自立心,広い共生の心をもって,自己の使命を見い出し,国際社会に貢献できる生徒」の育成を目指し教育活動に取り組んでいます。
 古川黎明の教育の特長としては,まず「併設型中高一貫教育」があげられます。これは中学生と高校生が同じ敷地,同じ校舎で学び,施設設備も共有しながら,中高6年間の継続した学びを可能とするものであります。日常の授業や部活動では中学校・高校教員の交流があり,今日の入学式に代表される儀式や全校集会は,中学校・高校合同で行われます。体育祭や黎明祭などの学校行事では中学生・高校生が一緒に企画運営に当たり,大変な盛り上がりを見せています。生徒会活動や部活動でも中学生・高校生がともに力を合わせて活動する姿があります。
 そして,「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」です。文部科学省から5年間の指定を受け,本校では全校生徒を対象としています。4年目となる今年は3年間の取組を踏まえ,各種の講演会,課題研究,海外研修,タイとの国際交流などの活動を推進していきます。

 ここで,新入生の皆さんに二つのことをお話ししたいと思います。
 一つ目は,「目標を持つ」ことです。
 学校で学ぶために必要なことは,向上心を持ち続けることです。日々の生活では喜びや楽しみよりも,苦労や困難なことの方が数多くあります。何度も壁にぶつかることでしょう。壁を乗り越えても新たな山がそこに見えて来ることでしょう。しかし,立ち向かう道は一つだけではありません。乗り越える方法は何通りもあります。そのことに気付くかどうかです。日々の経験から知識を学び,知恵を獲得することです。一段一段階段を昇るように,着実に歩みを進めることです。そのために必要なことは課題を持つことであり,目標をもつことです。私たちには,生まれながらに前向きに考える姿勢が備わっています。一歩を踏み出すために,はっきりとした目標・計画を自分で設計し行動に移してほしいと思います。
 二つ目は,「しっかりと考えること」です。
 「しっかり考える」とは,闇雲に考えることではありません。「科学的に思考する」ことです。「科学的思考」とは,課題を解決するための方法です。まず何をどうしたいのか。課題をはっきりとさせる必要があります。その課題がどこから見えてきたのか,なぜ見えてきたのかを調べなければなりません。そのためには下調べが必要です。集まった材料を様々な場面を考えながら組み合わせていきます。組み合わせ方も様々あるでしょう。つまり,教わった知識や自分で調べ考えて身につけた知識を総動員して,物事をよく観察し疑問を持ち,再び自分で調べ考えてよく教わり,新しい知識を身につける,さらに,自分で新しい課題を探して自分の力で解決していく。このようなこと全体が「科学的思考」ということです。このことはSSH事業とも関係しています。皆さんの積極的な取組に期待します。
 新入生の皆さん,入学式は誓いの場でもあります。皆さん一人一人の中学校生活あるいは高校生活への期待を6年間あるいは3年間忘れないでほしいと思います。今,考えている夢や,希望,決意を忘れずに,これからの生活の糧として生かしてほしいと思います。努力は必ず報われます。悩んだ経験は深みのある人間へ成長させてくれます。古川黎明は皆さんを全力でサポートします。一日も早く本校での生活に慣れ,学校生活が充実したものとなるよう努力してください。

最後になりますが,保護者の皆様にお願い申し上げます。本日から,お子様をお預かりいたします。我々教職員は,保護者の皆様のご期待に添えるよう,新校舎という新しい施設設備を最大限に活用し,生徒指導と学習指導を両輪として,一致団結して取り組みます。また,ご家庭と密接に情報交換しながら教育活動を進めて参りますので,保護者の皆様には,何卒,本校の教育方針へのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 結びに,本日,ご多用のところご臨席を賜りました皆様に,心より感謝を申し上げ,式辞といたします。

 平成27年4月7日
宮城県古川黎明中学校・高等学校  校長 庄子 英利 

平成26年度古川黎明中学校卒業式 式辞

 苦寒風雪を乗り越えてきた白梅が,花開く季節も間近となりました。
 この佳き日,同窓会長,中学校PTA会長,中高PTA会長をはじめ,多数の御来賓並びに保護者の皆様の御臨席を賜り,平成26年度宮城県古川黎明中学校 第8回 卒業証書授与式を挙行できますことは,卒業生はもとより教職員,在校生一同にとりましても,この上ない喜びであり,御臨席の皆様に,心よりお礼申し上げます。
 さて,ただ今,卒業証書を授与した79名の皆さん,御卒業おめでとうございます。
 私たちの故郷は,4年前の3月,東日本大震災という未曾有の大災害に見舞われました。皆さんは,大震災での大混乱の中,不安だけが先立つ生活を体験しました。その経験は皆さん一人一人の心のなかにしっかりと刻みつけられ,日々の学習活動に生かされてきたと感じています。この経験を忘れず,その試練をバネにして,厳しい環境にも負けずに頑張ってほしいと思います。
 それでは,卒業生の皆さんの今年度の活躍を振り返ってみたいと思います。
 学校行事では,体育祭での縦割り競技,黎明祭でのクラスパフォーマンスや展示,発表,販売,そして合唱祭。どの行事でも常に下級生をリードし,サポートしながら,黎明生としての自覚を促し,伝統の発展継続に力を注いできました。厳しく,優しく,丁寧に指導する姿がとても輝いていました。
 スポーツ部門では,宮城県中学校総合体育大会で,剣道,弓道,新体操,卓球及び陸上競技に出場しました。新体操部は女子団体第5位入賞,陸上競技では男子四種競技で第1位,女子100mで大会新記録第1位,女子100mHで第5位,女子砲丸投げで第7位に入賞しました。
 弓道部は東北弓道ジュニア選手権大会に出場し,男女個人でともに第5位に入賞しました。
 全国中学校陸上競技選手権大会では,女子100mで第4位,ジュニアオリンピック陸上競技大会全国大会においても,女子ジュニアA100mで第3位と大活躍しました。
 文化部門では,合唱部が全日本合唱コンクール県大会で金賞・審査員特別賞を受賞,自然科学部は,『学都「仙台・宮城」サイエンスデイ2014』において参加団体では最多となる11件の賞を獲得しました。
 コンテストやコンクールでは,宮城県読書感想画コンクール第1位,宮城県読書感想文コンクール優秀賞,国土緑化運動・育樹運動ポスター原画コンクール優秀賞,全国人権作文コンテスト県大会優秀賞,少年の主張宮城県大会優良賞,新聞記事コンクール論説委員長賞など数多くの賞をいただきました。
 また,「COPA COCA-COLA 2014」これは中学生によるサッカー全国大会ですが,合同チームで出場し優勝を果たしました。
 この他にも多数の大会で入賞し,古川黎明中学校ここにあり,とその存在感を示してくれました。
 本校は中高一貫教育校として,平成17年に開校して以来,様々な独自の教育活動に取り組んでいます。平成24年度からは,文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の指定を受け,中学校と高校の連携も深め,教育活動の一層の充実に努めてきました。このような中で卒業生の皆さんは,学業はもちろんのこと,中学生と高校生との交流の活発化を図るために,中高合同の学校行事やあいさつ運動などの生徒会活動への熱心な取組が見られました。
 開校以来,10年が経過し中学校としての伝統も根付き始めましたが,本校はまだまだ若い学校です。古川黎明中学校の卒業生は,皆さん第八期生を含めて,636名です。後輩たちは,これまでの伝統を引き継ぎ,新しい学校づくりも継承してくれると思います。今後はこれまでの経験を生かし,高校生の立場で,後輩たちを積極的に支援してほしいと思います。
 そして,皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族,地域の方々に対する感謝の気持ちも大切にし,これからも決して忘れないでほしいと思います。
 次に,今日の門出に際して,卒業する皆さんにはなむけの言葉を贈りたいと思います。
 それは,「よく考えること」です。
 全ては時が解決してくれるということもよく言われますが,時間が経過しても無為に過ごしては何も解決しません。これまでも,なぜだろう,どうすればいいのだろうという疑問や課題がいくつもあったことと思います。しかし,悩むだけでは何も解決しません。
 しっかり考えることです。ひたすら考えることです。物事には必ず始まりがあり,そして,動きがあります。はじめの状態から,どのように変化していくのか,今変化するのか,後から変化するのか,どうすれば,それを見極められるのかをよく考えるのです。どのように考えればいいのか。それは,私たち自身が持つ感覚です。その感覚を総動員することです。しかし,そのためには訓練が必要です。考えることを訓練することで,自己表現する力と課題を解決する力が高まります。物事を複数の方向から多面的に考えることができるようになります。
 現代社会は,知識基盤社会といわれています。様々な場面で多くの知識が要求されることになります,知識や技術を身につけるだけではなく,さらに,思考力,判断力,表現力を高めることが求められています。つまり,しっかり考えることがより重要になるのです。
 本校には,「言偏」という独自の科目があります。皆さんは,この授業を3年間真剣に正面から取り組んできました。やればできるという自信を身につけたはずです。何事もやればできると思います。考えればなんとかなります。今後,大切なその時に,十二分に力を発揮することができるはずです。
 また,本校はSSH指定校です。高校ではその活動が一層深まり,課題研究も始まります。これまで取り組んできた,しっかりと考えることに磨きをかけてほしいと思います。
 保護者の皆様に申し上げます。
 お子様の御卒業,誠におめでとうございます。卒業証書を受け取る姿を御覧になりながら,3年前の姿を思い出された保護者の皆さんも多いと思います。本校に入学してからの3年間で,お子様は知力,体力に加えて,心もたくましく成長しました。中高一貫教育校である本校で,日常生活において高校生と身近に接し,学校行事や生徒会活動などで交流し,高校教員による授業などの教育活動や,SSH事業などに全力で取り組んできました。これから始まる高校生活においては,この経験を生かし,もう一段高いレベルでの活躍を期待しているところです。
 この3年間,保護者の皆様から本校の教育活動に対する深い御理解のもと,暖かい御支援,御協力を賜りましたことに,深く感謝申し上げます。
 最後になりますが,卒業生の皆さんは,本校での沢山の体験から,多くを学び,多くの悩みも解決しながら本校で3年間過ごしてきました。これから始まる高校生活にも新たな気持ちで挑戦し,充実した生活となるよう努力してください。
 21世紀を果敢に生き抜くために,興味関心を幅広く持ち,未来を展望し,将来の目標を定め,行動して行くことを心から願っています。
 結びに,本日は御多用のところ,御臨席を賜りました御来賓の皆様,保護者の皆様に厚くお礼を申し上げ,式辞といたします。

 平成27年3月8日
宮城県古川黎明中学校 校長 庄子 英利 

平成26年度古川黎明高等学校卒業式 式辞

 春弥生,いまだ冷たい風が吹き付ける中,白梅は,日一日と力強くなる日光を全身に浴び,たくさんのつぼみが開花の準備を始めています。
 この佳き日,同窓会長,PTA会長を始め多数の御来賓の皆様の御臨席を賜り,平成26年度宮城県古川黎明高等学校第10回卒業証書授与式を挙行できますことは,卒業生はもとより教職員,在校生一同にとって,この上ない喜びであります。本日御臨席の皆様に,心より感謝申し上げます。
 さて,ただ今,卒業証書を授与した235名の皆さん,卒業おめでとう。
 今,皆さんの頭の中では,3年間のたくさんの思い出の映像が,高速で再生されていることと思います。振り返れば高校生活での,様々な試練もあったことと思いますが,その厳しい環境の中においても,学業を全うすることができました。これからの飛躍と飛翔を期待しています。
 保護者の皆様,お子様の御卒業,誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。本校でお預かりしましたこの3年間で,心身とも一回りも二回りも大きく成長し,自立への道を歩み始めるまでになりました。御家庭においても,数多くの御苦労があったものと推察いたします。十代後半の青春期特有の悩みを抱え,苦悩している姿も何度か見てきたことと思います。
 しかし,生徒たちは日々の生活の中で自ら乗り越え,解決してきました。高校生活の中で,学業だけではなく力強い精神力をも身につけてくれました。お子様方の益々の御活躍を心から期待しております。
 本校は大正9年の開校以来,94年,卒業生も29,415名を数えるまでになり,古川黎明高等学校としても,2,391名となりました。
 本校は「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと,「自ら課題を発見し解決する生徒の育成」「自立し未来に立ち向かっていく生徒の育成」「互いをよく理解し共に生きる生徒の育成」という3つの教育目標に基づき教育活動に取り組んでいます。
 平成24年度,文部科学省より「スーパー・サイエンス・ハイスクール」の指定を受け,一昨年夏には素晴らしい施設設備に恵まれた新校舎も完成し,教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは,SSHの第1期生として,1学年で「SS総合Ⅰ・防災地域科学課題研究」,2学年では「SS総合Ⅱ・課題研究」などの特長ある活動に,熱心に取り組んできました。困難が予想される内容もありましたが,皆さんは,素晴らしい研究成果を後輩に示してくれました。
 また,中高一貫教育校の生徒として,中学生,高校生,一貫生,通常生の違いを乗り越えて,全校生徒の交流が活発になるように,体育祭や黎明祭などの学校行事や生徒会活動において,中心となり活動してくれました。
 部活動では,部員同士の連帯を図るとともに,日々の活動での集中力と忍耐力,自分自身の気持ちをコントロールする力を身につけ,最後の最後まで努力する姿を,後輩たちの脳裏にしっかりと焼き付けてくれました。このことは皆さんにとっても,これからの長い人生での道しるべとなるものと思います。
 次に,今日の門出に際して,卒業する皆さんに2つお話ししたいと思います。
 まず,はっきりと「ありがとう」という言葉を伝えてほしいということです。
 日本語には「どうも」という大変便利な言葉があり,「ありがとう」「すみません」「こんにちはお元気ですか」などの意味で日常生活で多用されています。
 家族や親友のように「あうんの呼吸」で意思疎通を図ることができる場合もありますが,自分の気持ちは,しっかりと理解してもらうように表現していくことが大切だと思います。わかってくれているから「どうも」だけでいいではなく,はっきりと「ありがとう」と言葉にして,気持ちを伝えていくことが,特に現代社会での大切な潤滑油となっていくものだと思います。
 次に,臨床心理学者の河合隼雄さんの著書「こころの処方箋」から,「心のなかの勝負は51対49のことが多い」というものです。
 河合さんは次のように述べています。
『51対49というと僅かの差である。しかし,多くの場合,底の方の対立は無意識のなかに沈んでしまい,意識されるところでは,2対0の勝負のように感じられている。サッカーの勝負だと,2対0なら完勝である。従って,意識的には片方が非常に強く主張されるのだが,その実はそれほど一方的ではないのである。』
 物事を決断するとき,私たちの心の奥底には相反する意見が常に存在しているのにも関わらず,どちらかに決めてしまうと,相反するどちらの意見にも良い面,良くない面があったとしても,決めた方の意見のみを強く主張してしまうということです。実際には51対49のようにきわどい差であるのに,あたかも2対0の完勝であると決めつけてしまうのです。
 議論に際して,自分の意見を主張するだけではなく,自分の意見や考えを冷静に分析し,互いに相手の考えとの共通性や対立点を分析して議論することが重要であるということにつながると思います。
 最後になりますが,卒業生の皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族に加え,地域の皆様の御支援と御協力に対する感謝の気持ちも,決して忘れないでほしいと思います。
 さらに,校歌の一節にある『一念の「誠」のしるべ 朝夕のたゆまぬ「励」』,この意味するところを肝に銘じ,未来に向けて,ふるさとの一員として社会に貢献し,ふるさとの発展を創造していくことを願ってやみません。
 結びに,本日は御多用のところ,御臨席を賜りました御来賓の皆様,保護者の皆様に厚くお礼を申し上げ,式辞といたします。

 平成27年3月1日
宮城県古川黎明高等学校 校長 庄子 英利 

平成26年度古川黎明中学校・高等学校入学式 式辞

 新校舎玄関前に移植した校木の白梅が,いつものように,清楚に満開の季節を迎えました。
 この佳き日,PTA会長,同窓会長をはじめ多数のご来賓のご臨席のもと,平成26年度,宮城県古川黎明中学校・高等学校の入学式を挙行できますことは,誠に喜ばしい限りであります。ご臨席の皆様に対しまして,厚く御礼申し上げますとともに,本日,晴れの日を迎えられました保護者の皆様に,心よりお喜びを申し上げます。
 ただいま入学を許可した中学校105名,高等学校全日制課程普通科240名の新入生の皆さん,入学おめでとう。教職員及び在校生一同,皆さんの入学を心より歓迎します。
 本校は,大正9年に志田郡立古川高等女学校として開校,宮城県古川高等女学校をへて,戦後の学制改革により,宮城県古川女子高等学校となりましたが,その間80年以上にわたり,大崎地区の女子教育の中心校として,優れた人材を輩出してきました。
 そして,平成17年4月,宮城県の公立学校として最初の,併設型中高一貫教育校「宮城県古川黎明中学校・高等学校」としての歩みを始め,さらに昨年,念願の新校舎も完成し,古川黎明のセカンドステージが動き出しました。
 今年は,古川高等女学校の開校以来,94周年を迎えました。既に2万9千人を越える卒業生を,国内外に送り出し,古川黎明中学校の卒業生も550名を越えました。これまでの長い期間に積み重ねられた数々の歴史と伝統は,揺るぎなく,100周年に向けて,さらに教育活動の充実に努力していきます。

 本校は,「尚志」「至誠」「精励」の3つの校訓と,「創造力の育成」「自主・自立の精神の育成」「共生の心の涵養」という3つの教育目標を掲げて,教育活動に取り組んでいます。
 まず,中高一貫教育校としての教育です。これは,中学生と高校生が同じ敷地,同じ校舎で学ぶということだけではありません。日常の授業や部活動において中学校・高校の教員が交流しています。本日の入学式に代表される中学校・高校合同の儀式や集会,合同の学校行事である体育祭や黎明祭,生徒会活動や部活動でも,中学生・高校生がともに力を合わせて活動する姿があります。生徒たちも積極的に交流しながら,学校生活を送っています。
 次に,文部科学省から五年間の指定を受けている「スーパーサイエンスハイスクール」「SSH」です。全国では204校が指定されています。本校は,「連携による科学技術系人材の育成」を研究開発課題とし,高校だけではなく,中学校を含めた全校生徒を対象として取り組んでいます。3年目となる今年も様々な活動に取り組み,その成果を地域にも還元していきます。
 新校舎という新しい教育環境のもと,SSHを含めた全ての教育活動において,教職員一人一人が持てる力を十二分に発揮し,チームとして古川黎明の教育活動を推進します。

 さて,新入生の皆さんに2つのことを,お話ししたいと思います。
 1つ目は,「当たり前のことが当たり前にできるようになってほしい」ということです。
 社会には,たくさんの法律や規則,ルールがあります。それを守ることは当然のことです。ここでいう「当たり前のこと」とはそのことではありません。「おはようございます」という挨拶,「ありがとうございます」という感謝の気持ち,「すみません,ごめんなさい」という正直な気持ち,「お世話になりました」という思いやりの気持ち。私たちの社会は,共同生活で成り立っています。そのような言葉を素直に話すことができる生徒になってほしいと思います。
2つ目は,「学ぶ力を身につけてほしい」ということです。
 「学ぶ」とは,知識をただ覚えることではありません。知識を教わり,あるいは自分で調べ考えて身につけ,その知識を使って,物事をよく観察し,疑問を持ち,再び自分で調べ考えて,またよく教わり,新しい知識を身につける,さらに,自分で新しい課題を探して,自分の力で解決していく。このようなこと全体が「学ぶ」ということです。
 古川黎明の学習とは,押しつけられる勉強ではありません。「どうして」「なぜ」が始まりです。楽しいことばかりとは限りません。何日も悩むこともあるかもしれません。でもそれは必要なことです。まず自分で考えることが大切です。受け身ではなく,攻めることが必要です。本校の全ての先生方はその対戦を楽しみにしています。
 新入生の皆さんは,本校での中学校生活あるいは高校生活にたくさんの夢や希望を巡らせていることと思います。皆さん一人一人の喜びと決意が,この壇上までひしひしと伝わってきます。この入学式における今のその気持ちと決意こそが,これからの古川黎明での生活の意欲の源となります。初心を忘れることなく,夢や希望の実現に向け努力をしてほしいと思います。「チーム黎明」は皆さんをサポートします。一日も早く本校での生活に慣れ,積極的に学校生活に取り組むとともに,これからの学校生活で,少しずつ身も心も成長させ,充実した生活を送ることを期待しています。

最後になりますが,保護者の皆様にお願い申し上げます。本日から,お子様をお預かりいたします。保護者の皆さんのご期待に添えるように,我々教職員は,学習指導と生徒指導を両輪として,一致団結して,取り組んで参ります。また,ご家庭と密接に協力しながら,教育活動を進めて参ります。保護者の皆様におかれましては,本校の教育方針をご理解いただき,ご協力,ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 結びに,本日,ご多用のところご臨席を賜りました皆様に,心より感謝を申し上げ,式辞といたします。

 平成26年4月7日
宮城県古川黎明中学校・高等学校   
校長 庄子 英利 

平成25年度古川黎明中学校卒業式 式辞

 暦の上の春とは名ばかりで、連日の吹雪のなか、校木の白梅は、苦寒風雪を乗り越え、日一日とつぼみを大きく成長させ、その開花が待ち望まれるところです。
 この佳き日、同窓会長、中学校PTA会長、中高PTA会長をはじめ多数のご来賓、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成二十五年度宮城県古川黎明中学校 第七回 卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより教職員、在校生一同にとりましても、この上ない喜びであり、ご臨席の皆様に、心より御礼申し上げます。
 さて、ただ今、卒業証書を授与いたしました、八十名の卒業生の皆さん、これで無事に義務教育九年間の業を卒えました。ご卒業おめでとうございます。
 三年前の一月、県立中学校適性検査という難関を実力で突破して、本校第七期生として本校に入学することとなった矢先の三月、突然、東日本大震災という未曾有の災害に見舞われました。その大混乱のさなか、入学式も二週間遅れ、これから始まる中学校生活に、大きな不安を感じたことと思います。しかし、皆さんは自らも被災者でありながら、勇気を奮い立たせ、中学生としてできる様々な被災地支援活動にも進んで取り組んでくれました。この三年間、震災を忘れず、様々な試練から多くを学び、厳しい環境にも負けず頑張る姿をいつも見ることができました。本当にこの三年間、よく頑張ってくれました。
 まず、これから卒業生の皆さんのこの一年の活躍を振り返ってみたいと思います。
 スポーツ部門です。大崎市中体連総合体育大会で、バドミントン女子団体で第二位、個人でもダブルスで二チームが第三位、女子バレーボールも第三位に入賞しました。
 大崎市中体連陸上競技大会では、男子走幅跳びで大会新記録第一位、女子は、砲丸投げで第一位、走高跳びで第一位と第二位に入賞するなど、大活躍しました。他の種目でも上位入賞し、女子総合で優勝しました。
 大崎市中学校駅伝競争大会では、女子総合で第三位に入賞しました。
 さらに、女子円盤投げでジュニアオリンピック陸上競技大会全国大会に出場しました。
 次に、文化部門です。全国中学生人権作文コンテストで全国九十万をこえる応募作品から、全国第一位となる内閣総理大臣賞を受賞しました。さらに、全国小中学生作文コンクールで県優秀賞、宮城県中学校弁論大会で優良賞、少年の主張宮城県大会で優良賞を受賞しました。
 吹奏楽部は全日本中学高校生管打楽器ソロコンテスト南東北大会で金賞、合唱部は宮城県合唱アンサンブルコンテスト中学校の部で金賞・理事長賞に輝きました。
 自然科学部は、「みやぎサイエンス・フェスタ」や「日本学生科学賞宮城県審査会」で表彰されました。
 また、三年生有志が「チーム・アウローラ」を結成して参加した、第一回全国中学校リズムダンスふれあいコンクールの課題曲部門では、最優秀賞となる文部科学大臣賞受賞の快挙を成し遂げました。
 この他にも、多数の大会、コンテスト、コンクールの地区大会、県大会で入賞し、「古川黎明中学校」の底力を十二分に発揮してくれました。
 学校行事では、黎明祭でのクラスパフォーマンス、体育祭での縦割り競技、そして合唱祭。どの行事でも三年生が下級生を常にリードしている姿がとても印象的でした。
 本校は中高一貫教育校として、平成十七年に開校し「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと、教育活動に取り組んでいます。昨年度からは、文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」の指定を受け、中学校と高校の連携も深め、教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは、中学生と高校生との交流の活発化を図るために、黎明祭、体育祭などの中高合同の学校行事やあいさつ運動などの生徒会活動にも熱心に取り組んでくれました。昨年八月には念願の新校舎が完成し、教室棟の南校舎では、一階の中学生から、四階の高校一年生まで、中高生が同じ校舎で生活するようになり、一層その気持ちを強くしたものと思います。
 学校の伝統とは、脈々と受け継がれていくものではありますが、古川黎明中学校の卒業生は、皆さん第七期生を含めて、まだ五百五十七名であります。受け継ぐべき伝統も重要ですが、新たに伝統を生み出していくことも大切だと思います。後輩たちは、間違いなく多くの伝統を引き継ぎ、新しい学校づくりも継承してくれると思います。古川黎明高校や他の上級学校へ進学後も、この古川黎明中学校での生活をいつまでも忘れないでいてほしいと思います。
 もう一つ、皆さんを暖かく見守ってこられた保護者やご家族、地域の方々のご支援に対する感謝の気持ちも大切にし、決して忘れないでほしいと思います。

 次に、今日の門出に際して、卒業する皆さんにはなむけの言葉を贈りたいと思います。
 それは、臨床心理学者で、文化庁長官を務められた河合隼雄さんの著書「こころの処方箋」から、「百点以外はダメなときがある」というものです。
 「人生にも、ここぞというときがある。それはそれほど回数が多いものではない。とすると、そのときに準備も十分にせず、覚悟も決めずに挑むのは、全くばかげている。ところが、案外、そのような時でも九十点も取ればよかろう、という態度で臨む人が多いように思われる。このような人が、自分はいつも努力しているのに、運が悪いと嘆くのは、ことの道理がわかっていないと言うべきであろう。」と述べています。
 ここでいう百点とは、いわゆる試験の点数だけとは限らないと思います。どこまで頑張るのか、努力できるのかということも含む、それぞれの人の生き方と関わるものだと思います。通常の生活では、人それぞれの平均点であれば特に問題はないのだろうと思います。しかし、本当の試練は必ずいつかやってきます。前もってわかっている場合もあれば、突然やってくる場合もあると思います。そのとき、試されるのではないでしょうか。そのとき、果たして皆さんは全力を出せますか。大丈夫ですか。
 しかし、本校で三年間真剣に学習や様々な活動に正面から取り組んできた皆さんであれば、しっかりと力を蓄えてきていると信じています。そして、この時とあれば、十二分に力を発揮してくれるものと思います。
 社会の風潮に流されず、自分の意志を持ち、常に教養を高める習慣が身についていれば、いつでも百点である必要はありません。それよりも、必要な時にメリハリをつけて全力投球できる人、そして、感性豊かな人になってほしいと思います。

 保護者の皆様に申し上げます。
 お子様のご卒業、誠におめでとうございます。今日のこの姿を、三年前の姿と重ね合わせている保護者の皆さんもいらっしゃると思います。お子様方は、本当に成長しました。心身ともに大きくなりました。
 中高一貫教育校である本校で、日常生活において高校生と身近に接し、学校行事や部活動で交流し、さらに、一貫校としての独自の教育活動やSSH事業を経験することにより、お子様方は、本校教育目標にある、創造性を育み、自主・自立の精神と共生の心をしっかりと身につけてきました。今後、高校生としてもう一段の飛躍をしていくものと考えております。この三年間、保護者の皆様から本校の教育活動に対する深いご理解とともに、暖かいご支援、ご協力を賜りました。ここに、深く感謝申し上げます。
 最後になりますが、卒業生の皆さん、古川黎明中学校で学び、体験し、本校で過ごした三年間の有意義な時を忘れず、これからの高校生活をより充実させることを期待しています。皆さんが、これからも故郷の復興と未来のふるさとの発展のため、行動し続けることを心から願ってやみません。
 結びに、本日はご多用のところ、ご臨席を賜りましたご来賓の皆様、保護者の皆様に厚く御礼を申し上げ、式辞といたします。

 平成二十六年三月九日
宮城県古川黎明中学校        
校長 庄子 英利

平成25年度古川黎明高等学校卒業式・式辞

 暦の上では春を迎えたものの、今だ冷たい北風が吹き付ける中、植物たちは春の太陽の光を受け確実に目覚めの季節を迎えました。校木の白梅も、苦寒風雪を乗り越え、百花のさきがけとなるべく、堅く小さなつぼみが日一日と大きく成長してきました。
 この佳き日、同窓会長の千葉 典子 様、PTA会長の伊藤 知昭 様を始め多数の御来賓の御臨席を賜り、平成25年度宮城県古川黎明高等学校第9回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより教職員、在校生一同にとりましても、この上ない喜びであり、御臨席の皆様に、心より感謝申し上げます。
 さて、ただ今、卒業証書を授与した、全日制課程普通科241名の生徒諸君、卒業おめでとう。3年前を振り返れば東日本大震災による大混乱のさなか、本当に高校生活は始まるのだろうかという不安の中、2週間遅れで行われた入学式。その後の3年間にも、様々な試練が繰り返しありました。皆さんはその厳しい環境の中でも学業を全うし、今日、晴れて宮城県古川黎明高等学校の卒業生となりましたこと、心からお祝いします。
 また、保護者の皆様におかれましても、お子様の御卒業、本当におめでとうございます。この日を迎えるまでに数多くの御苦労があったことと思います。本校でお預かりしましたお子様方は、在学中に精神的にも大きく成長し、今後自立し飛躍が十分期待できるまでになりました。心からお祝い申し上げます。
 本校は、大正9年(1920年)、旧古川高等女学校として開校以来、93年、卒業生は本日、29,180名となりました。平成17年度に、男女共学化、併設型中高一貫教育校となり、古川黎明高等学校と改称してからも、2,156名の卒業生を送り出しています。
 本校は「尚志」「至誠」「精励」の校訓のもと、「自ら課題を発見し解決する生徒の育成」「自立し未来に立ち向かっていく生徒の育成」「互いをよく理解し共に生きる生徒の育成」という3つの教育目標を掲げ、教育活動に取り組んできました。昨年度からは、文部科学省「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」の指定を受け、教育活動の一層の充実に努めてきました。
 このような中で卒業生の皆さんは、中高一貫教育校である本校をよく理解し、中学生と高校生の交流をいかにして活発にしていけばよいかよく考え、黎明祭、体育祭、あいさつ運動などの学校行事に熱心に取り組んでくれました。昨年8月には念願の新校舎が完成し、教室棟の南校舎では、1階の中学生から、4階の高校1年生まで、中高生が同じ校舎で生活するようになり、一層その気持ちを強くしたものと思います。SSHでの活動でも、初年度から積極的な取組が見られ、後輩への影響力を強く発揮してくれました。
 また、高校生活の大部分を旧校舎で生活した皆さんは、旧校舎への思い出もとても強いと思います。1月に発行されたPTA広報誌「きらり」には、3年生を中心に旧校舎全てが思い出のスポットであるという声がありました。慣れ親しんだ旧校舎をいつまでも記憶にとどめておいてほしいと思います。
 さらに、部活動においては、最後の最後まで一所懸命プレーする姿は、後輩たちの脳裏にしっかりと焼き付いたことと思います。試合やコンクールは勝負です。しかし、その過程でそれまでの努力の成果や勝敗を越えた何かを感じ取ったはずです。このことは、これからの長い人生での良き思い出であり、再チャレンジやキャリアアップの目標となるはずです。努力は裏切らないといいます。これから、皆さん自身が作成していく人生の道しるべの1ページに是非加えてください。
 そして、皆さんを暖かく見守ってこられた保護者や御家族に加え、地域の皆様の御支援と御協力に対する感謝の気持ちも決して忘れないでほしいと思います。
 次に、今日の門出に際して、卒業する皆さんに2つお話ししたいと思います。
 1つは、「お陰様です」。
 何気なく使っている言葉、とても心が和やかになる言葉だと思います。これから、皆さんは進学や就職をし、社会人としての生活が始まります。高度に発達した文明社会となった現代では、私たちは、もはや全てを自給自足し一人で生きていくことはできません。私たちには様々な社会的生活が必要不可欠だということです。それは、むずかしいことではありません。普通のことをごく普通にしていればできることなのです。その基本はあいさつです。これは皆さんには何の不安もないでしょう。その次に、「お陰様です」と自分から話すことです。共同社会、共同生活を円滑にする魔法の言葉です。日本人が決して忘れてはいけない美しい言葉だと思います。
 2つ目は、柳田邦男さんの著書「気づきの力」から、「鋭い見る眼を持て」ということです。
 見る眼を鋭く豊かにするのは、豊富な知識と分析的な思考力が必要だが、それに加えて鋭敏な感覚・感性を持つことである。感性が豊かでなければ生き方を変えるような「気づき」は生じない。と述べています。
 自分の意志を持たず、社会の風潮に流され、他人の意見に翻弄されるのではなく、生涯にわたり教養を高める努力を惜しまず、自己を確立し、自立し、感性豊かに生活していくことが大切なことだと思います。しかし、「言うは易く行うは難し」です。特に感性という言葉を、冷静に見つめ、しっかりと考えていくことが、著者の言う「気づき」につながるのではないかと思います。
 最後になりますが、本校で過ごした3年間の有意義な時を忘れず、これからも、充実した日々となることを期待しています。本校校歌の一節にあるとおり「わざみがき 心きたへよ」であります。皆さんのこれからの努力が、未来のふるさと発展と充実の原動力となることを心から願ってやみません。
 結びに、本日は御多用のところ、御臨席を賜りました御来賓の皆様、保護者の皆様に厚く御礼を申し上げ、式辞といたします。

 平成26年3月1日
宮城県古川黎明高等学校 校長 庄子 英利

新校舎落成記念式典・式辞

 日一日と秋も深まり,本校校木の白梅も,葉を落とし始め,静かに冬に向けた装いを整え始めたところであります。
 この佳き日,多数のご来賓のご臨席のもと,本日ここに宮城県古川黎明中学校・高等学校新校舎落成記念式典を挙行できますことは,誠に喜ばしい限りであります。ご臨席の皆様に対しまして,厚く御礼申し上げます。
 おかげさまで,このように大変素晴らしい校舎が完成いたしました。工事関係者の皆様,宮城県教育委員会並びに,ご協力いただいた関係者の皆様に対しまして,深く感謝申し上げます。
 本校は,大正9年,志田郡立古川高等女学校として開校し,戦後の学制改革により,宮城県古川女子高等学校となりました。平成17年4月には,宮城県内の公立学校初の併設型中高一貫教育校,「宮城県古川黎明中学校・高等学校」として再出発しました。
 また,今年は,古川高等女学校が開校してから93周年を迎え,これまでの長い歴史に培われ,積み重ねられた良き伝統は,今も脈々と生き続けております。この春までの卒業生総数も,中学校も含め,二万九千人を超え,県内各地のみならず国内外にわたり,優れた人材を数多く輩出してきました。
 さて,これまでの校舎を振り返ると,初代校舎は,開校2年目の大正11年3月に,仮校舎の志田郡役所から現在地に新築移転しました。その後,昭和38年3月に二代目校舎の第1期工事が竣工し,7年後の昭和45年に最終第7期工事が竣工しました。
 初代校舎は木造で,当時の卒業アルバムを開いてみると,懐かしさを感じさせる趣のある校舎で,40年以上にわたり大崎地区あこがれの女子校の校舎として使われた歴史がありました。二代目の校舎は鉄筋コンクリートの近代的な校舎となり,今年7月まで約50年にわたり,たくさんの卒業生,在校生に親しまれ,大切に使われてきました。
 今年7月,三代目となる新校舎が完成しました。限られた敷地内に,様々な工夫が取り入れられ,バリアフリーはもちろんのこと,環境に配慮した設備も設置され,より安心・安全な校舎となりました。
 これまでは,中高一貫教育校とはいえ中学生,高校生が別校舎でしたが,現在は南校舎に全生徒が揃いました。各フロアには中学校・高校の特別教室などが効果的に配置されるなど設計にも工夫がなされており,今後さらに中高の連携を推進していきたいと考えております。また,校舎中央に配置されたこのアリーナ,北校舎四階の大講義室などは新校舎自慢の施設設備であります。
 本校は,歴史と伝統を踏まえ,「尚志」「至誠」「精励」の校訓を基に,「創造力の育成」「自主・自立の精神の育成」「共生の心の涵養」の三つの教育目標を掲げ,様々な教育活動に取り組んでおります。
 また,昨年,文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール」の指定を受けました。これは,高校だけではなく,中学校を含めた全校生徒を対象としたものであります。今年度は2年目を迎え,少しずつその成果が現れ始めてきました。理科や数学に対する興味関心の高まりのみならず,コミュニケーション能力の高まりも感じられるようになってきました。今後は,新校舎の素晴らしい施設設備の活用により,尚一層,教育活動を充実させ,発展させるよう努めていきたいと考えております。
 次に生徒の皆さん。言うまでもなく,この新しい校舎は,学校生活を有意義に過ごすために作られた,生徒の皆さんのものであります。そして,これから入学してくる未来の生徒のものでもあります。さらに,地域に開かれた学校として,宮城県民のものであります。これまで同様,校舎に優しく接し,丁寧に使い,いつまでも,50年先までも美しく保つように心がけてほしいと思います。この新校舎で生活できる喜びと幸せを忘れることなく,感謝の気持ちを持ち続けてほしいものであります。
 われわれ教職員も,新しい環境で教育活動に取り組める喜びを胸に秘め,新校舎という最大最強の教育環境を十二分に使いこなし,チーム黎明として教職員が一丸となり,校訓,教育目標の達成に向けて,生徒,保護者そして地域の皆様とともに,古川黎明中学校・高等学校の教育活動に邁進して参りますので,今後とも,皆様方のご支援,ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 最後になりますが,本日はご多用のところご臨席を賜りました,ご来賓の皆様に心より感謝を申し上げ,式辞といたします。

 平成25年10月25日
宮城県古川黎明中学校・高等学校   
校長 庄子 英利